アルコール飲料の未来にはさまざまな課題が待ち受けています。アルコールが睡眠を妨げること、死亡の原因になること、医療サービスの負担になることが認識されるにつれて、禁酒志向(sober curious)のZ世代をはじめ、若い世代はアルコールをますます敬遠するようになっています。低/ノンアルコールブームが勢いを増す中、こうした節酒トレンドは私たちの飲酒に対する見方を大きく変えています。また、気候変動やサステナビリティへの関心の高まりも従来のアルコール消費トレンドの足かせとなっており、消費者は水分補給作用よりもむしろ脱水作用のある飲料に疑問を投げかけるようになっています。
とはいえ、アルコールにはご褒美感やストレス解消効果、明るいムードを高めるといった点で長い社会的・文化的な歴史があることも確かです。こうしたニーズが途絶えることはありません。実際、都市化やデジタル化、孤立化が進み、ますます不安感が強まる現代では、こうした需要がいっそう成長していくと予想されています。
市場をリードしていくためにも、ブランドはこうした進化するアルコール業界のトレンドに対応していく必要があります。つまり、変化するアルコール消費のあり方やアルコールの未来について、より広い視点に寄り添う製品を再提案していかなければなりません。アルコール飲料ブランドは、より包括的な飲料ブランドへと成長していく必要があるのです。
世代と健康:アルコールの通説を打ち破る
アルコール業界の未来を紐解いていく中で、消費トレンドの変化を無視することはできません。アルコールブランドが「知らぬ仏より馴染みの鬼」の要領で慣れ親しんだ戦略にこだわりたいと思う反面、最新のトレンドでは優先順位の変化が顕著に浮かび上がっています。アメリカでは、2023年までの20年間でアルコールを飲む55歳以上の割合が10ポイント増加し、59%と高い割合を占めています。しかし、全体的な消費量は10ポイント低下しており、節酒を心がける消費者トレンドの成長がうかがえます。
特に、若い世代はこの減少を大きく牽引(けんいん)しています。2021年には、イギリスの16-24歳の相当数にあたる38%が「過去1年間にアルコール飲料を消費しなかった」と回答しており、2011年の19%から増加しています。
アルコールブランドが採用するもう一つの戦略に、タバコメーカーを参考に新興市場の開拓に力を入れるというものがあります。しかし、このアプローチも、世界のアルコール年間平均消費量が10年以上前に1人あたり6Lでピークを迎え、2020年には4.9Lまで減少した事実を度外視しています。
適度な飲酒による健康効果について長年信じられてきた通説は今、急速に衰退しつつあります。これまでは、毎日ワインを飲む習慣が世界の「ブルーゾーン」に住む人々の長寿を支えているという説や、1日に1-2杯のアルコールを飲むことで冠動脈心疾患リスクを低下できるといった説が信じられていたものの、こうした考え方にはますます異論が唱えられるようになっています。
その代わり、世界の疾病負荷に関する調査データやThe Lancetに掲載された研究によると、時折飲むアルコール飲料でさえ健康に害であることが示されています。アルコールは15-49歳における早期死亡の20%を引き起こしており、2019年には世界の244万人の死亡原因となっています。
NHSのデータによると、イギリス政府はアルコール関連の健康障害対策に年間最大520億ポンドを費やしており、2019-2020年にはアルコール摂取が約98万件の入院の主な理由だったことが示されています。
アルコール業界トレンド:消費者はアルコールとの付き合い方を再考
私たちはアルコールから得られるもの、少なくとも従来アルコールが与えてくれていたものを引き続き求めています。
五感を刺激し、明るいムードを届けてくれる飲料を私たちは必要としています。こうした消費者トレンドはミンテルの調査でも示されています。アメリカでは消費者の60%が「濃厚な/味わいのある」飲料を重視しています(リンクはクライアントのみアクセス可能)。また、アメリカでは消費者の49%が引き続きアルコールと人との交流を強く結びつけて考えており、約半数がアルコールとリラックス効果を結びつけて考えています。日本においても、20代男性の約3割がアルコール飲料を飲む理由として「人との会話や関係を円滑にするため」と回答しています。

アルコール代替飲料ブランドは、成分配合を刷新することで上記すべてを提案することができるでしょう。例えば、Sentia Blackから発売された「GABA(脳内の抑制性神経伝達物質)の分泌を促進する独自の機能性植物成分ブレンド」を採用した32ポンドのプレミアムボトルは、アルコールによる弊害を引き起こすことなく、明るいムードを高めるアルコールの効果をやさしく再現しています。こうした製品は、消費者にとって未来の飲酒のあり方を垣間見るきっかけになるでしょう。
著名人が手がけるノンアルコールブランド、例えばルイス・ハミルトンによるブルーアガベスピリッツAlmaveや、俳優トム・ホランドのノンアルコールビールブランドBEROは、これまでのアルコールに対する野心的なイメージやポジショニングをうまく表現・再現しています。

Almaveをはじめとするブランドは、ノンアルコールでありながらも従来のアルコールの野心的なイメージを再現することで、アルコールの未来を再定義しています。
一方、消費者は人と交流するにあたって、低/ノンアルコールカテゴリーからも脱却する兆しを見せています。例えば、カナダでは消費者の74%が、コーヒーショップを友人と集まって話すのによい場所として挙げています。一方、アメリカでは消費者の46%がアルコールの代わりにお茶を購入しており、ノンアルコールビールを購入する割合は14%にとどまっています。アルコールブランドはお茶やティーソーダブランドがどのようにモクテル市場に参入しているかから学びを得ることができるでしょう。また、Collider、Psychedelic Water、Hiyoなどのアメリカのブランドは、アダプトゲンや向知性成分を活用することで、リラクゼーションや社交性、話題性などの魅力をアピールしています。
アルコール業界でリラックス効果や涼しさを求める消費者ニーズに寄り添うには?
リラクゼーションを促し、睡眠をサポートする製品への需要はますます増加しています。アルコールやカフェインが問題視される中、こうした需要の変化はアルコール業界のトレンドにも影響を与えています。実際、イギリスでは低/ノンアルコール飲料消費者の52%が、低/ノンアルコール飲料を選ぶ主な理由として、アルコールによる睡眠への影響を懸念していることを挙げています。
日本においても脳のパフォーマンスに影響を与えると思われている因子は睡眠不足(69%)が断然トップであり、睡眠不足に対する懸念が強いことが分かります。また、同調査では「喫煙・飲酒・コーヒー摂取」について、約4割が脳のパフォーマンスに影響を与えると思われている因子として挙げています。

Philipsによる調査では、全体的な健康やウェルビーイングに最も大きな影響を与える要素として50%が睡眠を挙げており、食事(41%)や運動(40%)を上回っていました。これら2つのニーズはそれ自体ですでに巨大なFMCG市場を形成しており、飲料業界もこの流れに追随しています。ミンテルが調査を実施した全市場では、ストレス解消手段として運動を活用する人はアルコールに頼る人の2倍という結果でした。このことから、アルコール消費トレンドが変化していく中で、ウェルネスに注目した代替品はますます重要性を増していると言えるでしょう。
サステナビリティや健康懸念、世界的な問題が、必ずしもアルコールの売上低下につながるわけではありません。歴史的に見ても、飲酒文化に大きく貢献したイギリスの代表的なアルコール飲料、インディア・ペールエール(IPA)とジントニックは、長期航海や健康問題をとりまく機能性ニーズから誕生しました。IPAは、ホップを保存料として使用するため長距離移動に適しているほか、トニックウォーターに含まれるキニーネもマラリアを予防する効果があり、これをジンでおいしく仕上げたのがジントニックです。現在でも、イノベーションが引き続きアルコール業界を先導しています。例えば、Jopenから発売されたSummer Session IPAは海水を使って醸造されており、淡水を節約するイノベーションを通じてサステナビリティに配慮しながらも、その過程でブランドの差別化を図る取り組みを示しています。
一方、1.5°Cの気温上昇を想定した最も楽観的なシナリオでも、異常気象は世界的に4.1倍の確率で発生すると予測されています。こうした状況から、消費者は脱水作用ではなく水分補給をますます重視するようになっています。フィルター付きの浄水ジャグやコールドブリューコーヒーの成長は、飲料業界における清涼感トレンドの広がりを示す例でしょう。
次に何が起こるか?進化するアルコールトレンドに沿って多様化を図る
アルコール飲料は、ベビーブーマー世代で定着した味や新興市場の変化する好みに寄り添うことで、短期的な課題は乗り越えることができるでしょう。
しかし、長期的に見ると、アルコール消費量や飲酒習慣が徐々に低下していくことは明らかです。とはいえ、アルコール文化を根本から支えるニーズ、例えばご褒美感、リラクゼーション、味、体験、社交性などが衰退することはありません。今後はあらゆるカテゴリーの飲料が、時代を超えた消費者のニーズに応えるイノベーションをますます探求することになるでしょう。
アルコールは「ちょっとした背徳」や「節度をもって楽しむご褒美」として、これからも完全に消滅することはないでしょう。しかし、進化する消費者トレンドや消費行動の影響を受けて一変した業界でも、うまく適応している大手ブランドの例は数多くあります。アルコールブランドはそうした先進的なアプローチを取り入れることで、絶えず変化する市場の波を乗り越えていくことができるのです。
日本におけるアルコール飲料トレンド、および低/ノンアルコール飲料トレンドについては、こちらのプレスリリースでもご紹介しています。