消費財業界でイノベーションが果たす役割とは?

ミンテルの消費者・カテゴリーエキスパートがイノベーションの低迷を探り、こうした傾向の背景にある主な要因を明らかにしながら、今後のイノベーション競争を予測し、大手ブランドにとっての脅威を特定します。

2024年:世界における消費財のイノベーションが
史上最低水準を記録

消費財(CPG)メーカーが近い将来の市場模様を予測したいと思うのは当然のことです。しかし、コンピュータの父であるアメリカの科学者、Alan Kay氏の言葉を借りるとすれば「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創り出すこと」なのです。ミンテルの分析によるとこのような創造性はここ数年で低迷しており、こうしたイノベーションの減少が、消費財業界を牽引している大手企業の今後の収益性、ひいては生存性をも脅かす可能性を示唆しています。

ミンテル世界新商品データベース(GNPD)によると、2024年5月までに世界で発売された商品(食品・飲料、家庭用品、ヘルスケア、美容・化粧品、ペットケア全体)のうち、本当に「新商品」として発売されたものはわずか35%でした。これは、1996年にミンテルが新商品の追跡を開始してから記録したイノベーションで最低の割合となっています。これはつまり、2024年の現時点で新発売の65%が「リノベーション」、すなわち商品ラインナップの拡大や処方の変更、新パッケージへの刷新、リニューアルであることを意味します。

イノベーションの衰退は多くの場合、大手ブランドが消費者に新たな「付加価値」を提供することなく、大幅な価格上昇を推し進めようとしたときに起こります。
これをきっかけに、消費者はますますプライベートブランドに買い替え始めます。例えば、2024年5月には、アメリカの成人の3分の1近く(31%)が「過去2か月にストアブランドを購入することが増えた」と回答しています。では、こうした消費者は経済的な安心感が回復すれば、自然と大手ブランドへと戻ってくるのでしょうか?

消費財業界の課題:
南北アメリカ大陸でイノベーションが低迷

消費財のイノベーションは全地域で低下していますが、特に北アメリカ・中南米では最も顕著となっています。イノベーションの聖地シリコンバレーがあるアメリカでも、2024年5月までに発売された消費財で「新商品」であったのはわずか29%と、世界平均を大きく下回っています。

対照的に、中東・アフリカ、アジア太平洋地域は消費財業界で最もイノベーションが活発な地域となっており、成熟した市場よりも急速な経済成長率が反映されているだけでなく、強い起業家精神による「成長意識」もその一助となっています。例えば、IMFによる最新の世界経済見通しでは、2025年までにアジアの新興市場国と発展途上国で4.9%、中東・中央アジアでは4.2%の成長が予想されているのに対し、先進国・地域の成長予測はわずか1.8%に留まっています。

新型コロナだけが原因ではない

なぜイノベーションはこのように低迷してしまったのでしょうか?新型コロナの流行は確かにその一因です。この影響により企業の研究開発チームはラボや対面で仕事をすることが困難になりました。新型コロナ(およびロシアによるウクライナ侵攻)は世界経済に大きな打撃を与え、企業は守りの姿勢に入ることを余儀なくされました。成分コストの上昇、原料不足、人員削減などの課題に対応するために製品を刷新し、常に経営を支えなければならない状況においては、既成概念にとらわれない独創的なアイデアを育む余裕はほとんどありません。また消費者の立場でも、不安感が増したことで、新しい刺激的な製品を探すよりも、価格に見合う価値の追求が重視されるようになっています。ドミノ・ピザのCEO、Russell Weiner氏は最近のウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで「消費者はサプライズを求めていない」と語っています。

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本資料の目次

  • 2024年、世界の消費財イノベーションが史上最低水準に落ちる
  • 消費財業界の課題:南北アメリカ大陸でイノベーションが低迷
  • 新型コロナだけが原因ではない
  • 消費財業界トレンド:「大手 = 良い」の時代が終わる
  • 食品・飲料のイノベーションは半分近くに落ち込む
  • ビューティブランドはビジネスモデルを再考
  • 大手ブランドはイノベーション競争の波に直面
  • 大手消費財ブランドにとってプライベートブランドが大きな脅威に
The Role of Innovation in the Future of the CPG Industry