世界のスキンケア市場は1000億米ドルを超え、成長をけん引する要因にも変化が見られます。
本記事では、スキンケアカテゴリーを大きく変えつつある3つの潮流と、それがブランドにもたらす意味を解説します。美容医療に着想を得た有効成分が日常のスキンケア処方へ広がる動き、効果実感とプレミアム化を支えるデリバリー技術の重要性、そして肌の健康を長期的に捉えるロンジェビティサイエンスの影響です。
これらの変化を後押ししているのは、消費者行動の進化です。消費者は過度な訴求に対してより慎重になり、肌の生物学に関する理解を深め、ブランドに対して臨床レベルの根拠を求めるようになっています。今後の消費者期待を的確に捉えるブランドほど、信頼を獲得する戦略を築きやすくなるでしょう。
記事全体を通じて、Croda Beauty社の有効成分部門マーケティング責任者であるPascale Rossi氏が、成分イノベーションと今後の成長をけん引する要素について業界の視点を紹介します。
美容医療に着想を得た有効成分が、効果への期待値を引き上げる
消費者の期待値は、臨床的な基準によって再定義されつつあります。美容医療がより一般的な選択肢となる中、韓国女性とブラジル女性(リンクはミンテルのお客様限定アクセス)の約半数が「非侵襲的な美容施術を受けることは受け入れられる」と回答しており、スキンケア製品もプロフェッショナルな施術の結果と比較されるようになっています。

この流れは、再生ケアや施術レベルの効果を想起させる「美容医療隣接型」の有効成分への需要を高めています。なかでも、ポリデオキシリボヌクレオチド(PDRN)は、急速に注目度を高めているスキンケア成分のひとつです。PDRNは、美容医療で人気の高い施術「Rejuran」に用いられる注入成分として知られてきましたが、現在は日常使いのスキンケア処方にも広がり始めています。ミンテル世界新商品データベース(Mintel GNPD)のデータでも、PDRN配合製品の発売が2024年以降大きく加速していることが確認されています。
エクソソームに着想を得た技術も、臨床美容と日常のスキンケアをつなぐ重要な橋渡し役となっています。特に施術後の回復ケアにおいて、修復をサポートし、ダウンタイムを軽減し、肌バリアを整える目的で化粧品処方に応用されています。Labiotteの「Phytosome RX Recovery Cream」は、高密度のエクソソーム模倣型Cicasomeシステムにより、鎮静、バリアサポート、再生ケアを一体化した事例です。

PDRNとエクソソーム着想技術の台頭は、美容医療レベルのサイエンスがクリニックから日常のスキンケアへ移行していることを示しています。消費者がプロフェッショナルな施術の効果を自宅で維持・延長・再現できる製品を求める中、ブランドには、確かな科学的根拠と、効果を目に見える形で理解しやすく伝える感覚的な手がかりの両方が求められます。
Croda Beautyの視点

デリバリー技術が、新たな差別化要素に
効果効能に関する訴求に対する消費者の目は、ますます厳しくなっています。成分訴求が飽和しつつある中、よく知られた成分であることだけでは信頼獲得につながりにくくなっています。米国消費者の4分の3は、美容ブランドは訴求を裏付ける科学的根拠をより多く提示すべきだと考えています。また中国では、女性の8割以上が、有効成分の濃度が高すぎるスキンケア製品は肌にダメージを与える可能性があると回答しています。成分リストや高濃度処方だけでは、もはや十分な説得力を持ちません。
そこで重要になるのが、デリバリー技術です。どの成分を使うかだけでなく、その成分をどのように肌へ届けるかへと価値の軸を移すことで、ブランドは先進的な処方をより実感しやすく、信頼でき、プレミアムなものとして伝えることができます。
マイクロニードルを活用したフォーマットは、この変化を象徴しています。Mintel GNPDの2021~2025年のデータでは、マイクロニードルを含むフェイスケア・ネックケア製品の開発割合が増加しており、スキンケアと美容機器の境界を曖昧にするソリューションへの消費者関心が高まっていることがうかがえます。これは、マイクロニードルやスピキュール、カプセル化技術などを通じて、成分の効果を高め、特定の肌層へより的確に届けるためのデリバリー技術を革新する機会をブランドにもたらします。
Croda Beautyの視点

ロンジェビティは、スキンケアを「補正」から「スキンスパン」へと広げる
美容ブランドは、表面的なアンチエイジング訴求を超え、加齢の生物学的な根本要因に働きかけ、健やかに見える肌をより長く保つことを目指すロンジェビティサイエンスとの接点を強めています。
この変化は、長期的な健康やロンジェビティを重視する消費者が増えていることに加え、科学的な裏付けと理解しやすい目に見える効果を求めていることによって進んでいます。韓国では、女性の44%がロンジェビティを「コラーゲン生成など、肌老化のサインを逆転させること」(リンクはミンテルのお客様限定アクセス)と捉えています。
加齢に関わる生物学的プロセスについての消費者理解も進んでいます。中国では、女性の3分の1以上が、ミトコンドリアを標的としたデリバリーがスキンケア製品の効果向上に最も寄与すると考えており、細胞レベルの訴求が具体的な効果や肌実感と結びつくことで、より高い説得力を持つことが示されています。
過去2年間、Mintel GNPDでは、米国と欧州においてロンジェビティに関連するフェイスケア・ネックケア製品の訴求が伸びていることを確認しています。これは、ヘルススパンとスキンスパンを結び付け、予防的なエイジングケアの文脈で訴求する製品への需要が高まっていることを反映しています。米国消費者の65%がSPFの使用など、予防的な美容アプローチを取り入れていることからも、この流れは今後さらに加速すると考えられます。

ブランドにとっては、目に見える老化サインを補正するという発想から、肌のレジリエンスに関わる細胞レベルの経路、すなわち代謝、ミトコンドリア機能、炎症、細胞老化などをいかにコントロールするかへと会話を広げることが重要になります。
Croda Beautyの視点

スキンケアイノベーションの次なる時代に、ブランドはどう対応すべきか
科学的信頼性を、視覚と使用感で伝える
美容医療に着想を得た有効成分やエクソソームが日常のスキンケアへ広がる中、ブランドには、クリニックレベルの成分を信頼できるものとして伝えるだけでなく、消費者にとって理解しやすい形に翻訳することが求められます。
臨床的な裏付けは引き続き不可欠ですが、複雑なサイエンスを体験を通じて直感的に理解させる、視覚的・感覚的な手がかりも信頼性を支える重要な要素になっています。
Medicubeの「PDRN Pink Peptide Serum」は、その好例です。PDRNのサーモンDNA由来というストーリーを、特徴的なピンク色によって感覚的に表現することで、技術的な成分ストーリーをより直感的なビジュアル言語へと変換しています。こうした感覚的な手がかりは、複雑なサイエンスを消費者にとってより具体的なものにし、臨床的な訴求と製品理解のギャップを埋める役割を果たします。

デリバリー技術が、効果への信頼ギャップを埋める
成分訴求が飽和する中、デリバリー技術は差別化とプレミアム化へのより明確な道筋を示します。ブランドは、濃度の高さを前面に出した効果訴求から、より賢く、より的確に届ける処方設計へと移行することができます。
「HA Micro Patch AX Filler」のような製品は、デリバリー技術そのものが主役になり得ることを示しています。数千本の溶解性マイクロニードルによってヒアルロン酸を肌のより深い層へ届けることで、従来の塗布型製品では得にくい効果を可能にします。同時に、目に見える体験型の使用感を通じて効果を印象づけ、ふっくら感や弾力の向上といった実感につなげています。
この変化は、カテゴリー全体の進化を示しています。特定の肌層へ届ける力によって、標準的な塗布型製品よりも測定可能な効果優位性を示せるフォーマットは、プレミアム価格を正当化し、スキンケアにおける効果への期待値を再定義するうえで有利な位置に立つでしょう。
加齢に影響する生物学的要素を明確に示す
消費者がロンジェビティや長期的な肌のレジリエンスを重視するようになる中、ブランドはスキンケアをより広いヘルススパンの文脈で捉えた先進的なソリューションを打ち出しています。
機会は、こうした生物学的メカニズムを消費者にとって理解しやすく伝えることにあります。細胞修復、炎症コントロール、サーチュイン、ミトコンドリア、細胞老化といったロンジェビティ経路に対して、製品技術がどのように働きかけるのかを示すことが重要です。
Estée Lauderは、ロンジェビティサイエンスを信頼性のあるスキンケア戦略へと落とし込んでいる明確な事例です。同社のアプローチは、代謝、ミトコンドリア機能、炎症コントロールなど、肌老化に関わる主要なプロセスの調整を助ける細胞の「ロンジェビティタンパク質」であるサーチュイン(SIRT1~SIRT7)を中心に据えています。
Estée Lauderは15年以上にわたる研究と、MITやハーバード大学を含む研究機関との協業を通じて、複数のサーチュインが肌の生物学にどのように関与するかを整理したフレームワークを構築してきました。
Estée Lauderはより高度なロンジェビティ領域で展開していますが、その取り組みは、ブランドが自社の製品技術を通じて、肌老化に関わる生物学的プロセスや、内的・外的ストレス下での細胞レジリエンスをどのように支えるのかを示す重要性を示唆しています。

ミンテルとともに、スキンケアイノベーションの次なる時代をリードする
スキンケアカテゴリーは、根本的な転換期を迎えています。次の成長をリードするのは、単に新しい成分を持つブランドではなく、クリニックレベルの有効成分、デリバリー技術、生物学的ターゲティングを組み合わせ、測定可能な結果を生み出す統合的なパフォーマンスシステムを構築できるブランドです。
消費者が求めているのは、約束ではなく、根拠です。
これはブランドにとって、プレッシャーであると同時に大きな機会でもあります。成分の目新しさだけで競争を続けるブランドは、実証可能な効果が求められる市場において存在感を失うリスクがあります。
一方で、細胞レベルで効果を証明し、それを消費者に分かりやすく伝え、信頼性のあるロンジェビティの文脈に位置付けられるブランドは、スキンケア成長の次のフェーズをリードする存在となるでしょう。
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