広告におけるサステナビリティの進化する展望を明らかにしましょう。本記事では、2019年から2024年にかけて発売された約32万点の食品、飲料、美容製品の広告を分析し、サステナビリティ訴求がどのように活用されているのかを掘り下げています。重要な消費財(CPG)のコミュニケーション戦略に特化した本インサイトをぜひご活用ください。
「特化型エコ」の時代を迎える:曖昧な訴求はもはや現代の消費者に響かない
サステナビリティに対する消費者の意識はここ数年で大きく進化しています。消費者がより知識を身につけたことで、ブランドが掲げるグリーン訴求や環境訴求にますます懐疑的な目が向けられるようになっています。同時に、生活費の逼迫(ひっぱく)を受けて、「価値」や「有効性」がこれまで以上に注目されています。
しかし、サステナビリティは消費者にとって引き続き重要なポイントです。例えば、イギリスの消費者では73%が「環境にやさしい行動をとるようにしている」と回答しています(リンクはミンテルのクライアントのみ閲覧可能)。こうした取り組みはブランドのコミュニケーション方法にも反映されており、ミンテルのマーケットインテリジェンス分析によると、2024年のデジタル広告費の4%をサステナビリティ関連訴求が占めています。
とはいえ、ブランドによるコミュニケーション方法は、消費者が重視するポイントに合わせて進化していく必要があります。サステナビリティに関する曖昧なグリーン訴求では、知識豊富な現代の消費者の心を捉えることはできません。それだけでなく、消費者はそういったブランドをグリーンウォッシュの疑惑で糾弾することもできるのです。
サステナビリティをめぐるマーケティングの展望では、よりターゲットを絞った具体的なアプローチが求められます。曖昧な訴求ではなく具体的な取り組みや活動にフォーカスすることで、より明確な差別化を実現し、信頼を構築できるだけでなく、特定の分野でより優位性を獲得しやすくなるでしょう。
ブランドは「特化型エコ」でニッチ市場の獲得を目指す
「特化型エコ」は、サステナビリティをめぐるマーケティングの重要な進化を象徴するものであり、ブランドが普遍的で曖昧な環境訴求から、業界や消費者の懸念に寄り添う具体的で実践的なサステナビリティへの取り組みへとシフトする動きを指しています。
美容製品における詰め替えや食品における責任ある農業など、明確なトピックに力を入れることで、ブランドは差別化を図り、信頼を構築しながら、消費者とより深いレベルでつながることができるでしょう。
「特化型エコ」の重要なポイントは、複雑な問題を取り上げ、それが消費者にとって何を意味するのかを時間をかけて説明することです。Arlaは、長期的な視点で消費者を責任ある農業への取り組みへと導くブランドの好例です。
2021年、Arlaは農場ツアーや自社の「farmer-owner」モデルを紹介するところからメッセージの発信を始めました。現在、Arlaの最新の広告シリーズでは引き続き農家の支援が取り上げられていますが、この活動によりArla自身も、自社の責任ある農業について透明性のある分かりやすい方法で伝えることができるようになっています。
Arlaの広告は農家を支援しながら、責任ある農業について透明性をもって伝えています。
1つのブランドがすでに問題を取り上げているからといって、他のブランドもその役割を果たすことができないというわけではありません。Marks & Spencer – M&Sもまた、「特化型エコ」の訴求をうまく活用した例です。M&Sは広告で環境再生型農業を取り上げるだけでなく、それを自社の高品質な地元農産物をアピールする手段としても活用しています。こうしたアプローチにより、購入者は自分たちが農家を支援しているだけでなく、その過程でより良い製品を手にしているのだと実感することができるのです。
Marks & Spencer – M&Sは「特化型エコ」のメッセージを活用し、自社食品の品質の高さや環境再生型農業のメリットをアピールしています。
同様に、ビューティブランドも似たような「特化型エコ」戦略を採用しています。2024年、サステナビリティをめぐる議題はパッケージに関するエコ訴求から詰め替え可能な製品へと移行しました。このトレンドは、Fussyのデオドラントをはじめとする革新的なブランドがほぼ独占的に先導しており、こうしたブランドは自社の詰め替え製品を「コスパの高いライフスタイルの選択肢」として売り出しています。一方、プラダをはじめとする高級ブランドは、自社の詰め替え製品を「時代を超えた永久的なアイテム」として売り込むことで、この波に乗っています。
Fussyはコスパの高い価格で詰め替え製品を販売し、デオドラント業界を革新しています。
プラダのサステナビリティをめぐるメッセージはエレガントなアプローチを採用し、自社ボトルを「時代を超えたアイテム」として売り出しています。
「特化型エコ」は消費者とつながる確かなアプローチ
イギリスでは、消費者の大多数が引き続き環境を大切にしていきたいと考えています。これは、イギリスの消費者の73%(リンクはミンテルのクライアントのみ閲覧可能)にあたる相当数が「環境にやさしい行動をとるようにしている」と回答していることからも明らかです。しかし、サステナビリティに関して言えば、消費者の大半が「価値観第一」というわけではなく、環境問題に対する価値観だけのために価格や品質を妥協するつもりはありません。
その代わりに、消費者はブランドに対して環境問題への責任をますます求めるようになっています。多くの人が、製品による自然界への影響を最小限に抑えることはそのブランドの責務だと感じています。「ブランドが環境問題への対処を率先することを期待している」という記述に同意する人の割合は、2023年の60%から2024年には65%(リンクはミンテルのお客様のみ閲覧可能)まで増加しています。
こうした意識の変化には、環境活動家による影響もあると考えられます。イギリスでは消費者の37%が「環境活動家の影響によって環境問題への意識が高まった」と回答しており、例えばGreenpeaceがユニリーバのDoveに対してロンドンの同社オフィス前で行ったデモなどの抗議活動が影響を与えています。
こうした意識の高まりを受けて、サステナビリティをめぐるマーケティングに対して具体的な活動を伴わないブランドをボイコットする動きが緩やかながらも確実に増加しています。
ブランドにとって、これは課題であると同時に商機でもあります。「特化型エコ」は、ブランドが自社の環境負荷について正直であるとは思っていない39%のイギリスの消費者の信頼を、透明性と主体性をもって取り戻すための一つの方法なのです。
イギリスでは消費者の37%が「企業は政府よりも世の中に大きな影響を与えることができる」と考えていることから、行動を起こし、変化をもたらしていることを消費者に納得させることができるブランドは、信頼を獲得する大きなチャンスを掴むことができるでしょう。特定の問題にフォーカスした透明性のある取り組みへと導くことでブランドが構築した信頼は、消費者が店頭で実際に購入する製品を決める際の大きな影響力となるのです。
「特化性エコ」はどこから来たのか?
サステナビリティをめぐるマーケティングコミュニケーションで取り上げられるテーマを分析すると、時代とともに人々の意識がどのように変化してきたかを探ることができます。コロナ渦で優先順位が下がっていた時期を除き、ブランドは一貫してデジタル広告費の一定割合をサステナビリティに割り当てていることから、こうしたトピックを宣伝することに引き続き商機があると考えられていることが分かります。
キャッチコピーに含まれるトピックに基づきサステナブルな広告をグラフ化すると、食品・飲料と美容業界の両方で「特化型エコ」へのシフトが顕著に見られます。食品・飲料業界では、2019年にプラントベースブームが本格化しました。2024年には、プラントベースが引き続き上位トピックではあるものの、環境にやさしいパッケージや責任ある農業も話題に上がるようになりました。美容市場における主なエコ訴求、クリーン訴求も進化しています。「クリーンガール」トレンドに見られるオーガニックでナチュラルな製品への需要を受けて、2023年には「ナチュラルさ」をめぐる広告がピークを迎えましたが、2024年には詰め替え製品が主流になりました。
「特化型エコ」の4つの柱
サステナビリティは引き続き消費者にとって重要なものであり、競合ブランドとの差別化ポイントでもあります。しかし、知識豊富な環境意識の高い消費者に今後対応していくためには、より目的に沿った「特化型エコ」のメッセージへと進化させていく必要があります。
今日のブランドは、1つのサステナビリティ問題に特化した訴求に力を入れ、その複雑さを受け入れながらも真の変化を起こし、最終的に消費者の信頼を回復していくことで、サステナビリティとの前向きな関係性を築いていくことができるでしょう。
これを達成するためには、サステナビリティに関するメッセージを支援し、それを長期戦略に組み込んでいくことが必要です。
- サステナビリティの注力領域を明確に定義する
曖昧な訴求やカーボンオフセットなどの「利用しやすい」トピックは避け、自社ブランドに合った明確かつ実践的な環境への取り組みを見極めましょう。 - 透明性とエビデンス
具体的な活動や目に見える成果を示すコンテキストデータで訴求を裏付けることで、消費者の信頼や安心感を構築しましょう。 - 消費者への理解促進
その取り組みがなぜ重要なのか、それが環境、メーカー、消費者にどのようなメリットをもたらす のか(コスト削減、健康効果、製品の品質向上、より良い生活環境)、その中でブランドや消費者がどのような役割を果たせるのかを明確に伝えましょう。 - 長期的なコミットメント
トレンドを追いかけるのではなく、代わりにサステナビリティをブランドのアイデンティティの中核に組み込み、メッセージの一貫性を保ちましょう。
ミンテルコンサルティングで「特化型エコ」を実践する
サステナビリティに対する消費者の意識はここ数年で大きく進化しています。曖昧な訴求では、もはや現代の消費者の心を掴むことはできません。ブランドのコミュニケーションは、消費者が重視するポイントに合わせて進化していく必要があります。そのためには、よりターゲットを絞った具体的なサステナビリティに関するメッセージを伝えていかなければいけません。そこで、ミンテルコンサルティングが力を発揮します。
私たちはお客様に新たな視点をお届けし、お客様の個別の目標に合わせた成功戦略作成をサポートいたします。お客様の分野における将来の成長機会を発掘しながら、サステナビリティのメッセージで差別化を図る方法を特定するお手伝いをいたします。
ご関心のある方はぜひミンテルコンサルティングへお問い合わせください。ブランドの長期的な成功につながる、最適な戦略の策定をお手伝いいたします。