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ドナルド・トランプ大統領が導入した関税は、すでに食品や飲料の高騰に不満を抱いているアメリカの消費者に新たな課題を突きつけることになりました。トランプ大統領の関税案が現実のものとなれば、食品・飲料メーカーや小売業者は、最新の政策変更に対応しながらサプライチェーンの柔軟性を維持し、価格上昇の正当性を説明する必要に迫られるでしょう。

これらの関税は、特にカナダとメキシコからの輸入が多いことを考えると、食品・飲料の価格と供給に直接的な影響を与えることが見込まれます。2月3日(月)の時点で、カナダとメキシコはアメリカとの間で新たな関税発動を30日間延期することで合意しました。カナダのジャスティン・トルドー首相は、国境協定に関する交渉が行われている間、カナダ製品に対する関税発動は延期されると述べました。メキシコも、アメリカとの国境に数千人の軍隊を派遣することに合意することで、同様の延期交渉を行いました。

企業は、価格調整の理由を消費者に説明する際、透明性があり、共感を得られるようなコミュニケーションをとる必要があります。新たな混乱への対応にうんざりしているアメリカの消費者の怒りを買わないためには、明確なコミュニケーションが重要です。

アメリカの消費者はすでに、高騰する物価から逃れることができないと感じています。生活費、特に食品・飲料の高騰が何年も続いていることから、アメリカの消費者はすでに疲弊しており、どんな原因があろうと、さらなる値上げは歓迎されないでしょう。

アメリカの消費者が実感する関税の影響

トランプ大統領は前回の任期中、関税を他国との交渉を開始するための手段として利用してきました。このことから、長期的な関税の動きとして、アメリカが競争上の優位性を求めている産業、例えばテクノロジーやグリーンエネルギーなどに対しては、より限定的に、あるいはより穏やかなものになる可能性があります。

しかし、トランプ前政権に見られたように、関税は他の必需品の価格を引き上げ、すでに家計が圧迫されていると感じている消費者を苦しめることにつながります。アメリカの消費者は過去数年間に節約につながる代替品を見つけてきましたが、関税によるさらなる値上げによって、低価格で購入できる食品や飲料の数は減るでしょう。生活費の上昇は、経済状況が逼迫している、苦しい、または困難だとしているアメリカの消費者の27%にとって、特に厳しいものとなるでしょう。また、価格の上昇は、自分たちの経済状況を「問題ない」と答える36%の消費者が毎月自由に使える金額を制限することにもなります。

サプライチェーンの透明性

関税はまた、企業が原材料、包装材料、輸入品の新しい調達先を探さざるを得なくなる原因にもなりかねません。ミンテルが「2025年グローバル食品・飲料トレンド」で取り上げた「世界情勢に影響される食卓」のトレンドでは、サプライチェーンのシフトが予測されており、サプライチェーンの再構築によって生じる原産地、原材料、その他の変更を、消費者が受け入れやすいように企業側がサポートしていく必要性を強調しています。

インフレによって、アメリカの消費者の多くが食品・飲料の価格を強く意識するようになっています。多くの消費者は、関税のように世界情勢に関わる問題に起因していたとしても、価格上昇の正当性をいち早く指摘し、疑問視するはずです。

価格に敏感な消費者は、価格を維持する努力から生じる産地、配合、パッケージの変更であれば、より受け入れる傾向にあります。ラテンアメリカのビールブランドPresidenteが「より新鮮な味わいを求めてアメリカで醸造しています」と謳っているように、企業は国内生産による価格以外の利点をアピールすることもできます。コロナ禍と同様に、関税の影響を受けていないメーカーや小売業者は、アメリカ国内での事業活動が人々と国内経済にいかに貢献しているかを印象付けることができるのです。

ミンテルの見解

消費者への透明性:食品・飲料ブランドは、関税によって値上げや、原材料、包装材料、輸入品に関するサプライチェーン上の変更に迫られた場合、消費者に対して透明性を確保し、説明責任を果たすことで、共感を得られるよう準備をしておくことが大切です。

値上げは慎重に:アメリカの消費者の半数以上が食品や飲料の価格高騰の影響を感じていることを考えると、小売業者やメーカーは、関税に起因する値上げについては戦略的に実施すべきです。関税の影響を受ける日用品の価格はできるだけ低く抑え、高級品や必需品ではない輸入品については、より柔軟に価格設定することも一つの手段でしょう。

サプライチェーンに関する変更点の明示:関税によって企業が産地、原材料、パッケージを変更する必要が生じた場合は、ミンテルが2025年グローバル食品・飲料トレンド「世界情勢に影響される食卓」で推奨している通り、変更の内容とその理由について消費者に誠意をもって伝えることが大切です。

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トランプ政権が食品・飲料および各消費財業界に与える影響について、さらに知りたい方は、最新のSpotlightの関連記事、「トランプ政権は消費財ブランドにとって何を意味するのか」をご覧ください。(登録不要でご覧いただけます)

ジェニー・ゼグラー
ジェニー・ゼグラー

ミンテルフード&ドリンクディレクター

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