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健康やフィットネス、全体的なライフスタイルのニーズとの関連性が強いことから、アメリカにおけるたんぱく質の消費量は最高水準に達しています。消費者は運動能力だけでなく、エネルギーの持続や満腹感の維持、ヘルシーエイジングをサポートする上でもたんぱく質が不可欠だと考えています。

本記事では、アメリカにおけるたんぱく質の主要トレンド、消費者行動、そしてアメリカのたんぱく質消費に影響するテクノロジーの進歩について概説します。進化するたんぱく質市場トレンドの展望や同業界の今後の見通しについて、実用的なインサイトをぜひご活用ください。

アメリカのたんぱく質市場の規模とは?

アメリカのたんぱく質市場では、従来の動物性たんぱく質からプラントベース代替品までさまざまな製品が発売されています。このダイナミックな市場は2024年時点で1,144億ドルの規模と推定されており、2028年まで年間1.9%のペースで成長すると予測されています。こうした堅調な成長は、高たんぱく食品への関心の高まりや、健康、サステナビリティ、利便性に対するニーズの変化に業界が対応していることを示しています。

アメリカ人はどの程度たんぱく質を摂取しているのか?

アメリカでは、肉や魚といった従来の主食から革新的なプラントベース代替品まで、さまざまな形のたんぱく質が消費されています。大半の消費者は、生ものや冷凍品からすぐに食べられる製品や調理済み食品まで、現代の利便性ニーズに寄り添う幅広い形状・タイプのたんぱく質を活用しています。

特に注目すべきは、消費者の約90%が定期的に動物性たんぱく質を摂取しているのに対し、40%以上がプラントベースたんぱく質を食事に取り入れていることでしょう。こうした消費者層の細分化、そして代替たんぱく質トレンドの後押しも受けて、ブランド・小売業者は今後さらに多様化し、シェアを拡大させていくことができると予想されます。

アメリカのたんぱく質市場を席巻するトレンドとは?

市場をリードする上で、ブランドは以下に挙げるたんぱく質の消費者トレンドを注視していく必要があります。

1. アメリカのたんぱく質市場では、クリーンラベルや透明性のある原材料が注目を集める

消費者は「オールナチュラル訴求 = ヘルシー」というイメージをますます持つようになっており、その影響で加工を最小限に抑えたより透明性の高い製品の需要が急増しています。この傾向は、消費者の半数近くが「オールナチュラルなたんぱく質は本質的により健康的」だと回答したミンテルの調査結果からも明らかです。原料調達や生産に関する認証やストーリーを伝えていくことで、ブランドイメージをさらに高め、信頼やロイヤルティを築いていくことができるでしょう。

2. 「機能性」のポジショニングがプロテインバー市場のトレンドの鍵となる

製品パッケージに記載される成分情報では「高たんぱく」訴求がメジャーとなっており、エネルギーや筋肉の回復、満腹感の向上を求める消費者の心を捉えています。ケトジェニック愛好家やフィットネスに勤しむ人々をターゲットにしたたんぱく質製品も引き続き拡大しています。

食生活の目標を達成するための手軽な方法を消費者が求める中、高たんぱくなスナック、バー、飲料などのカテゴリーは活発に成長しており、アクティブな若い世代にとっては「機能性」のポジショニングが特に魅力的なものとなっています。

3. たんぱく質の新たなトレンドでは「利便性」「価値」が未来の担い手に

たんぱく質市場では、利便性が引き続きイノベーションの大きな推進力となっています。下処理済みの製品やすぐに食べられるスナック、準備が簡単なミールキットなどは多忙な家庭に欠かせないものとなっています。しかし消費者の60%以上が付加価値のあるたんぱく質製品を継続的に消費している一方で、30%近くは消費を減らしたと報告しています。消費を減らした消費者は、食事の準備時間を短縮できるメリットに魅力を感じてはいるものの、製品が過度に加工されていることに懸念を抱いているようです。

4. プラントベースたんぱく質トレンドが成長中、しかし精査は続く

健康やサステナビリティへの懸念からプラントベース製品が力強い成長を見せている一方で、その過度な加工のイメージから同カテゴリーには引き続き精査の目が向けられています。消費者は、栄養素やたんぱく質の完全性について明確な説明を求めているのです。また、世代間の格差も顕著にあり、懐疑的なベビーブーマー世代と比べて若い世代はこうした製品を受け入れる割合がより高くなっています。

このバランスを取るためには、フレーバーのイノベーションで味の良さを、健康基準をクリアした代替たんぱく質で栄養価をどちらも届けていくことが必要でしょう。

5. たんぱく質の消費者トレンドは品質に注目

アメリカでは、全体的にたんぱく質の品質にますます目が向けられるようになっています。完全たんぱく質(9種類の必須アミノ酸をすべて含むたんぱく質)がメジャーになりつつあり、消化性や手に入れやすさに定評のある動物性たんぱく質が引き続き市場をリードしています。しかし、最近ではプラントベースたんぱく質も勢いを伸ばしており、穀物や豆類を組み合わせたイノベーションにより、たんぱく質の完全性も高まっています。

6. たんぱく質市場ではテクノロジーがイノベーションを推進

培養肉や精密発酵といったテクノロジーは、未来のたんぱく質ニーズを持続的に満たしていく上で不可欠な存在です。AIなどのツールでは成分配合の最適化により優れた味や栄養価が実現しており、細胞培養肉では環境負荷を抑えた革新的なソリューションが開発されています。

製品カテゴリー別に見るアメリカのたんぱく質消費量

消費者の好みの変化やサステナビリティ、健康懸念などの要因による影響を受け、アメリカにおけるたんぱく質の消費量は製品カテゴリー(動物性、プラントベース代替品、機能性食品)ごとに異なる様相を呈しています。ここからは、製品カテゴリー別の概況を詳しく見ていきましょう。

動物性たんぱく質が引き続き市場を独占

動物性たんぱく質は大多数のアメリカ人にとって引き続き食生活の基盤となっており、健康・環境への影響が懸念される中でも、2025年の赤身肉の売上は769億ドルに達すると予想されています。

肉・魚のカテゴリーでは品質や価格が主な購買要因として挙げられており、購入者の50%以上がこれらの要素に基づいて購入を決めています。調理済みや下処理済み、1食分に小分けされた肉などの便利なイノベーションは、消費者の「料理疲れ」に寄り添うことができるでしょう。また、こうした製品の助けを借りることで、自炊に慣れていない若い世代でも自信を持ってたんぱく質豊富な食事を作ることができるのです。

プラントベースたんぱく質トレンドや代替品が食肉メーカーに挑む

飽和脂肪酸やコレステロールへの懸念、倫理的な理由(サステナビリティ)などから、一部の消費者は肉や魚といった従来のたんぱく質を避けるようになっています。2024年時点で12億2,500万ドルと推定されたプラントベースたんぱく質市場は、やや成長ペースが停滞しているものの、サステナビリティの目標や食生活の多様化から引き続きイノベーションの分野として注目されています。

機能性たんぱく質製品の台頭

プロテインバーやRTDシェイク、サプリメントなどの機能性食品は、その利便性や多機能性から勢いを増しています。スナックが従来の食事に取って代わる動きが進む中、RTD飲料やバーはさまざまなライフスタイルに取り入れやすく、外出時での消費トレンドにもマッチしています。

Three Little Pigsから発売されたSous Vide Egg Bitesは、手軽にさっと食べられる満腹感のあるスナック需要を活用。出典:3pigs.com

サステナビリティとサプライチェーン問題により、たんぱく質市場では戦略の再考が迫られる

肉・乳製品の生産ではサステナビリティへの圧力がますます高まっており、環境への懸念から、環境再生型農業やカーボンフットプリントのラベル表示が検討されています。対照的に、プラントベースたんぱく質は「環境にやさしい代替品」として確立していますが、加工に対する精査の目を潜り抜ける必要があります。

地元での調達、生産プロセスに関する透明性のあるコミュニケーション、そして健康関連のメッセージと環境配慮とのバランスを取ること。これらはサステナビリティの課題に取り組む上で重要な戦略です。

サステナビリティへの意識が高まる一方、消費者の行動の変化は依然として漸進的です。ブランドは、味や利便性にこだわる層を遠ざけることなく、環境へのメリットを伝えていくための革新的なアプローチを探る必要があるでしょう。

アメリカのたんぱく質市場の今後の展望

たんぱく質市場の未来は、健康意識、利便性、サステナビリティ、そしてイノベーションのバランスを見極める業界の能力にかかっています。

プラントベース代替品などの新しいたんぱく質トレンドを活用する、従来の動物性たんぱく質を現代の感性に合うように改良するなど、ブランドは絶えず変化する消費者の価値観を予測し、それに適応していく必要があります。

日本における「たんぱく質と代替たんぱく質トレンド」

日本のたんぱく質市場やトレンドについては、ミンテルジャパンレポート「たんぱく質と代替たんぱく質トレンド」にて詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひミンテルジャパンまでお問合せください。

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