Expo West 2026(正式名称:Natural Products Expo West)は、米カリフォルニア州アナハイムで開催される北米最大級のB2B展示会で、ナチュラル/オーガニック領域を中心に、食品・飲料、サプリメント、パーソナルケア等の新商品・原材料・ソリューションが集積します。業界関係者にとっては、市場トレンドの把握と商談・ネットワーキングの主要な場として位置づけられます。
Expo West 2026は、ミンテルが健康・栄養・消費者期待の領域で長年追ってきた変化を、改めて明確に映し出す場となりました。今年とりわけ目立ったのは、フレーバーの革新そのものよりも、「身体がどう感じるか」への関心が、身体的・感情的、さらには代謝面にまで広がりながら再編されている点です。会場で見られた主要テーマの多くは、ミンテルの予測と重なり、いまや商業的に意味のある形で顕在化しています。以下では、カテゴリやフォーマット、ブランドを横断して、私たちの予測が可視化されていた7つの領域を紹介します。
1. 長らく待望された「食物繊維ルネサンス」がついに現実に
食物繊維は会場を通して最も目立った共通項の一つであり、「健康と満腹感の両面で、食物繊維は最も活用されていない栄養資産の一つ」だというミンテルの見方を裏付けました。
特に目立った動きは次の3点です。
日々の基盤栄養としての食物繊維
Supergutなどは、食物繊維を「不足の是正」ではなく「中核」として位置づけ、代謝サポートやベースライン栄養を、より分かりやすい言葉で訴求していました。
レガシー食品が食物繊維の価値を引き上げる
Sunkistがプルーンやプラムを現代的にアップデートする取り組みは、伝統的な高食物繊維食品が、現代のニーズに合わせて再定義できることを示しています。大手では、とりわけPepsiCoがSunChipsやSmartfoodといった馴染みのあるブランドの中で食物繊維を前面に出し、潮流を後押ししました。
食物繊維の感情・ライフスタイル文脈への統合
Belli WelliやBellyciousは、ユーモアや透明性を通じて食物繊維を身近にし、機能性と「共感できる感じ」の両方を重視する若年層にアプローチしていました。



これらのシグナルを総合すると、食物繊維は「義務」から「憧れ」へと位置づけが移行し、これまで見過ごされがちだったカテゴリに新たな機会を生み出していることが分かります。
この潮流を先取りしていたミンテルのレポート

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2. 消化ウェルネスは新たな「文化フェーズ」へ
ミンテルは数年にわたり、消化器の健康はプロバイオティクスの枠を超えて広がり、より「格上げ」されたテーマになると報告してきました。Expo Westは、その進化がどこまで進んだかをはっきり示しました。会場では「お腹の快適さ」を率直に扱い、排便習慣にまつわるタブーが薄れ、消化の現実について消費者がより語りやすくなっていることを示唆しています。
この変化を明確に示す例は次の通りです。
・Sourmilk:低乳糖で、プロバイオティクスを強化したギリシャヨーグルト
・Fody:「消化のトリガーなし(no digestive triggers)」を強調。低FODMAP層に限定せず、「不快感を最小化したい」というより広いニーズを反映
・Pacha:「膨満感のないパン(bread without the bloat)」を掲げ、そば粉サワードウで既知のペインポイントに対応
・Leaven’s:インスタントのサワードウスターターで、発酵と消化耐性を接続。かつてニッチだった話題が一般認知へ
・Lily of the Desert:アロエ由来の胃ケア処方サプリメント。やさしく非医薬品的な消化サポートへの関心拡大を示唆




Expo Westでは、消化を「状態」ではなく「プロセス」として捉える関心が深まっていることも確認されました。今後は腸内環境を総称する「gut health」という言葉にとどまらず、ガス、膨満感、通過時間、便の形成といった段階別・課題別に、より踏み込んだ会話とイノベーションが進むでしょう。食物繊維、低GI/スロー炭水化物、消化酵素、ポストバイオティクス化合物などで、より高度な商品開発が進む土台が整いつつあります。
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3. 減量だけでなく、筋肉増(筋量維持・強化)へ視点を移す
注目すべきは、GLP-1関連のメッセージが2025年に比べて控えめだったことです。ただし、これを関心低下と捉えるべきではありません。むしろブランドは、薬剤名を明示せずに、GLP-1と整合する食習慣パターン(プロテイン、食物繊維、水分補給、低GIオプション等)をプロダクト設計に取り込んでいるように見えました。これは、医薬品ではなく「行動(習慣)」に焦点を当てるべきだというミンテルの提言とも一致します。体重管理は引き続き重要である一方、Expo West 2026では、業界の会話が「強さ」「筋肉の維持」「代謝レジリエンス」へとシフトしていることが明確でした。
プロテインは依然として幅広いカテゴリに浸透していましたが、より示唆的だったのはクレアチンの存在感です。スポーツ栄養の枠を超えたフォーマットでの採用が進んでいました。
クレアチンはバー、ハイドレーション飲料、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)プロテイン、さらに電解質やコラーゲンと組み合わせた「スタック型」処方にも登場していました。
プロテイン需要は乳製品の新提案にも表れており、カッテージチーズベースのディップ(Cotto)、ピザクラスト(The Tattooed Chef)、アイス(Cottage Creamery by DFA)などが見られました。また、FageのBest Self(ラクトースフリー)ヨーグルトやA2ミルクなど、消化に配慮した乳製品は、プロテイン密度を落とさずに「耐性(tolerance)」の懸念に応えていました。



低GI甘味料の活用や、ゆっくり発酵させたピザ生地など、血糖負荷(グリセミックロード)を下げるためのさりげない工夫も見られ、代謝健康を「大声で語らずに」訴求していました。
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4. MAHAの影響が原材料の「当たり前」を塗り替える
MAHA(“Make America Healthy Again”)ムーブメントは、文化面・商業面の双方で引き続き大きな影響力を持っています。解釈は多様である一方で、ホールフード志向、分かりやすい原材料、そして従来の脂質(脂肪)を見直す動きといった中核原則が広く見られました。
Expo West 2026では、具体的に次の形で表れていました。
・「健康そうに見える指標(healthy heuristics)」に合わせた先回りのリフォーミュレーション。“Clean”“Natural”に代わり、“Real food”がより良い選択(BFY:better-for-you)を示す言葉として急速に広がっています。
・人工着色料に頼らずに「楽しい」商品体験をつくるため、大胆なパッケージ、新しい食感、その他の感覚要素を探るブランドが増加。
・シードオイル(植物種子油)を減らした処方、そしてタロー(牛脂)の採用拡大。
・A2製品や高度ろ過ミルクを含む、乳製品の再評価(リバイバル)。

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5. 差別化要因は「フレーバー」から「食感」へ
今年は支配的なフレーバートレンドが見られなかった一方で、商品開発を明確に形づくっていたのが食感でした。サクサク、エアリー、ホイップ、パフ、レイヤーといった食感が、菓子、スナック、乳代替など幅広いカテゴリで登場しました。2026年に向けては、フレーバー実験よりも「感覚的な新しさ」が処方選択を導いていることを示唆します。
特に目立った食感の例:
・Humm:ナイトロ(Nitro)コンブチャ
・Wobble:モダンなゼラチンミックス
・Esprizo:スパークリング・エスプレッソ・スプリッツ
・Bobba/OMG Bubble Tea:RTDボバティー
・Tosi:Crispy Puffsとバー
・Mochi Food:ハワイ風の、ふわっ&もちっとした餅ベーキングミックス






複数の感覚に働きかける食感イノベーションは、消費者がマンネリを抜け出し、体験主導で記憶に残る瞬間をつくる助けになります。ブランドは新鮮で刺激的な食感を用いて、喜びやワクワク感を喚起していました。
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6. 消費者の「家計ストレス」の兆しが見え始める
会場には、景気後退を見据えた初期パターンが反映されていました。ピザや麺類などのコンフォート系フォーマットが目立ち、しばしば「手頃な贅沢」として提案されていました。こうしたサインは、消費者が家計の引き締めを予期しながらも、小さく満足度の高いトレードオフ(ご褒美)を求める局面で表れがちです。
前述の通り、今年は支配的なフレーバートレンドが見られず、ブランド側の慎重さがうかがえました。ミンテルは、経済的圧力が高まるほど、消費者はフレーバー選択で保守的になると予測していました。シンプルなフレーバーは、出費を抑えつつ、汎用性の高い食材でパントリーを満たしたい消費者に響きます。
ノスタルジックなフレーバーへの関心は今後も強いままでしょう。ノスタルジーは安心感を与え、新商品に挑戦する際の心理的リスクを下げます。認知しやすい味の「心地よさ」は、先行きの読みにくい出来事が増える中で、ひと息つける選択肢として消費者を支えます。
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7. 「気分」をデザイン原則にする
今年のExpo Westで最も明確だったテーマの一つは、「気分(mood)」を、機能ベネフィットであると同時にブランド体験として設計する、業界の意図的なシフトでした。エナジー、落ち着き、集中、喜びといった要素は、マグネシウム、アダプトゲン、ヌートロピックを用いた飲料処方に限らず、ブースでの表現全体にも表れていました。これはAI時代における「人間らしい真正性」と情緒的な共鳴の必要性を示すと同時に、人がAIに対して優位性を持つための設計思想でもあります。
ブースを見渡すと、強い印象を残したのはフレーバーというより「感覚」でした。ブランドは、感覚的サイン、没入型アクティベーション、遊び心のある美学を用いて、情緒状態を示すことに注力し、しばしば原材料の説明以上に強く打ち出していました。GOODLESのチャーム収集型スカベンジャーハント、Simply Popでのオーラ・リーディング、Sliceの自販機、そしてマキシマリストなPoppiの“ファンハウス”まで、会場は「軽やかさ」を求める共通の文化的欲求に寄り添っていました。
機能性飲料の例:
・Bear Maple Farms:持続的なメンタルエナジーを狙い、ジンセン(高麗人参)を配合したクリーンソーダ
・Recess:Mood/Zero Proofライン
・De Soi:ソーシャル・スプリッツ
・oHy:明晰さ、回復、バランスを支える目的でマグネシウムを加えた水素スパークリングウォーター



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まとめ
Expo West 2026が映し出した「いまの空気感」は明確です。人々は、感情面でも身体面でも「気分よくいられる」食を求めています。消化の透明化、食物繊維の格上げ、リアルフード(real food)フレームワークの影響、食感を重視した感覚設計、そしてブランド美学・ヌートロピック・アダプトゲンを通じた感情への接続といった会場のトレンドは、何年もかけて積み上がってきた消費者ニーズを反映しています。
ブランドにとって今の機会は、明確さ(clarity)、機能(function)、情緒的共鳴(emotional resonance)をバランスさせつつ、信頼できるエビデンスに基づく栄養設計に立脚した商品として、これらのテーマをつなぎ合わせることにあります。
健康・栄養をめぐる消費者習慣の変化に対応したい食品・飲料ブランドの皆さまは、ぜひご相談ください。貴社の課題と機会に合わせたインサイトをご提案します。
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