長年にわたりタンパク質は栄養面で注目を集め、朝食用シリアルから飲料まであらゆる製品に登場しています。Mintel GNPDによると、高タンパク質または高添加タンパク質を謳う食品・飲料製品の割合は過去10年間で*倍増しました(*リンクはミンテルのお客様のみアクセス可能)。一方、「腸活」という言葉の広がりに見られるように、腸の健康を意識する人が増加しているにも関わらず、整腸作用を訴求する高食物繊維または高添加食物繊維を謳う製品の市場はほぼ横ばいです。
ブランド各社や健康専門家がタンパク質の摂取を推奨するのに対し、食物繊維の摂取は多くの人々にとって依然として低い状況にあります。食物繊維は私たちの健康に重要な役割を果たしますが、スーパーフードとしてのタンパク質の地位がそれを覆い隠してしまうことがよくあります。しかし、健康的な食生活を考える上では、タンパク質 vs. 食物繊維のどちらが良いという問題ではありません。実際には、健康的な食生活にはタンパク質と食物繊維のバランスが不可欠です。どれかひとつのスーパーフードを他のスーパーフードと比較するのではなく、スーパーマンとクラーク・ケント(スーパーマンの前身)のような最強コンビとして捉えましょう。
食物繊維とタンパク質:ブラン(ふすま)とブローン(筋肉)の解説
タンパク質はまるでスーパーマンのような存在です。スーパーマンが颯爽と現れて窮地を救うのと同じように、タンパク質は筋肉を構築し、組織を修復し、免疫システムをサポートします。身体が必要とする強さと回復のために呼び起こすヒーロー、それがタンパク質です。
一方、食物繊維はクラーク・ケントのようなものです。静かで穏やかで、控えめですが、絶対に欠かせない存在です。食物繊維が消化を助け、血糖値を調節し、腸内環境を良好に保つように、クラーク・ケントは陰で物事をスムーズに動かしています。食物繊維はそれほど目立たない存在のため、気づきづらいですが不足するとその影響を感じます。
食物繊維とクラーク・ケントはどちらも重要な役割を果たしていますが、見落とされがちです。クラーク・ケントがスーパーマンに必要なバランスを与えるように、私たちの身体もタンパク質だけでなく食物繊維の存在によって健やかさを保っています。ずっとスーパーマンでいるのが危険なように、タンパク質だけを摂るのも危険です。消費者は健康を維持するためにバランスをとる必要があります。私たちには「ブラン」と「ブローン」の両方が必要なのです。
タンパク質が“最強の栄養素”と呼ばれる理由
タンパク質は、明確で多用途、そしてトレンドを意識したポジショニングに加え、目に見えるメリットと魅力的な製品形態を備えているため、消費者の認識獲得や、素材に関する知識を提供することに苦労する食物繊維よりも販売しやすいという利点があります。タンパク質は力と活力を象徴するのに対し、食物繊維は秩序と信頼性を象徴し、バランスと規則正しい食生活の維持を促します。
タンパク質は、消費者が理解し実感できる明確で測定可能なメリットを提供することで、高い評価を得ました。筋肉増強、満腹感、回復サポートといったタンパク質の核となるメリットは、健康志向の消費者の心に響くマーケティングメッセージに容易に反映されました。タンパク質がトレンドとして成功したのは、体重管理やフィットネス目標といった目に見える懸念事項に対処したからです。ブランド各社はこれを活かし、スナックから飲料まで、予想外のカテゴリーにタンパク質を加えることで、タンパク質という単一の栄養素を中心に数十億ドル規模の市場を創出しました。
このタンパク質第一主義思考により、世界的な食物繊維不足の深刻化が進み、健康効果が確立されているにもかかわらず、食物繊維はチャンスを逃してきました。多くの消費者は、味や消化不良などの理由で、食物繊維を積極的に摂取していません。しかし、食物繊維の中には、口当たりが良く消化しやすいものもあります。

多くの人が1日に推奨される25~30グラムの食物繊維を十分に摂れておらず、
見過ごせない深刻な栄養不足が生じています。
食物繊維重視の未来:その課題とは?
食物繊維の普及が遅れている理由として、いくつかのマーケティング上の課題が挙げられます。
・実感しにくいメリット:
食物繊維は消化器系の健康と満腹感に関連していますが、これらのメリットはタンパク質ほど即効性がなく、目に見えにくいものです。食物繊維の効果は長期にわたることが多く、消費者が「実感」しにくいため、そのメリットを魅力的に訴求することが難しくなります。
・認識の問題:
食物繊維は、味気ないか食欲をそそらない食品と結び付けられることがあり、消化不良を起こすのではないかと心配する消費者もいます。こうした認識が、食物繊維を豊富に含む製品の魅力を低下させている可能性があります。
・知識ギャップ:
さまざまな種類の食物繊維とその健康効果に関する消費者の知識には大きなギャップがあります。そのため、ブランド各社にとっても、食物繊維の価値を広く共感される方法で伝えることが難しくなっています。
広がりを見せるタンパク質トレンドに続いて、食物繊維が参入する余地はあります。よりホリスティック(包括的で全体的)な健康志向のモデル、バランスの取れた栄養への移行は、食物繊維の相乗効果を強調することで、ウェルネスムーブメントに加わる新たな機会を生み出します。特に消費者が食物繊維のメリットをより深く認識するようになるにつれ、各企業やブランドは食物繊維が満腹感、消化器系の健康、血糖値のコントロールに果たす役割をますます強調するようになるでしょう。
食物繊維:控えめだけど頼れるヒーロー
多くの人は、1日に推奨される25〜30グラムの食物繊維を大きく下回る量しか摂取しておらず、対応が必要な深刻な栄養不足を生み出しています。 タンパク質は多くの消費者がすでに十分に摂取できている一方、食物繊維不足は実際に健康に悪影響を及ぼす深刻な課題となっています。
“ファイバーマキシング”はついに食物繊維をトレンドに押し上げるのか?
TikTokトレンド「Fibermaxxing(食物繊維を最大限に活用して身体機能を最適化すること)」は、健康志向のムーブメントとして広がり、人々に日々の食物繊維摂取量を意識的に増やすことを促しています。その方法は多くの場合、クリエイティブで視覚的にも魅力的です。TikTokユーザーは、レシピや食事の準備、食物繊維に関するハックを共有し、互いに摂取目標の達成をサポートしています。なかには、1日に30~40gの食物繊維摂取を目指す人もいます。食物繊維摂取量を増やすために、消費者は果物、野菜、豆類、全粒穀物、種子、ナッツなど、食物繊維が豊富な食品を食事に取り入れるだけでなく、植物の多様性、色、食感にも注目しています。
食物繊維を多く含む食事は、特に腸内環境や血糖値のコントロール、体重管理などに効果がありますが、食物繊維の摂取量を急激に増やすと副作用が生じる可能性があります。食物繊維の急激な増加は、特に水分摂取量が少ない場合、膨満感やガス、けいれん、便秘を引き起こす可能性があります。また、食物繊維の過剰摂取は鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの重要な栄養素の吸収を妨げる可能性があり、特に食物繊維が他の栄養豊富な食品に取って代わる場合は、その影響が大きくなります。
食物繊維との健全な関係を促す
消費者が食物繊維についてより深く理解するにつれて、消費者が食物繊維の摂取量を徐々に増やすためのサポートやアドバイスが必要になります。例えば、週に5gずつ増やしたり、消化器系で食物繊維がスムーズに行き渡るよう健康的な水分補給を促したりといったサポートです。多くの米国の消費者は水分補給に積極的に取り組んでおり、39%が昨年と比べて水分補給に重点を置くようになったと回答しています。

また、消費者が食物繊維全般についてより深く知るようになるにつれ、様々な種類の食物繊維とその効果を理解するためのサポートがますます必要になるでしょう。水溶性食物繊維は血糖値を調節しコレステロールを下げるのに役立ちますが、不溶性食物繊維は便通を促進し、大腸の健康をサポートします。一部の食物繊維にはプレバイオティクス効果があり、腸内細菌によって発酵されるという利点があります。
食品に含まれる食物繊維の行方
食物繊維は、タンパク質に続き健康志向製品における次の「必須栄養素」として注目されることが予想されます。食物繊維は、タンパク質ではカバーできない幅広い健康問題に対応します。消化器系の健康をサポートし、血糖値をコントロールし、腸内細菌の栄養源となり、心血管の健康にも貢献します。そしておそらく最も重要なのは、現代の食生活における真の栄養ギャップを埋めることです。
食物繊維が主流の成功を収めるには、ブランドは以下の点を満たす必要があります。
・関連するメリットを訴求する:
消化の規則性だけでなく、満腹感と腸の健康にも焦点を当てる。では、次に注目すべきは?健康的なエイジング、血糖値のコントロール、そして慢性炎症の軽減といったメリットです。
・適切なカテゴリーを選択する:
食物繊維を摂取するにあたっては、朝食やスナック市場から始めることが最も理にかなっています。ただし、ブランド各社は消費者が抱く「味」に関する懸念にもしっかり答える必要があります。また、良い風味やその他の感覚特性を明確に伝えることができなければ、高食物繊維製品の普及を妨げる大きな要因となってしまいます。
・適切な原材料を選択する:
食物繊維の供給源とその植物の由来を明確にすることで、訴求力と透明性を高めます。腸内細菌叢の活性化は多様な食物繊維源に依存するため、多様な食物繊維で消費者をサポートする必要があります。
ミンテルと共に食物繊維の未来に備える
食物繊維のような単体の栄養素が、市場全体をどのように形作っていくのかを理解することは、ほんの入口に過ぎません。当社の市場調査とミンテルコンサルティングサービスは、消費者行動と食品業界を変革するトレンドを深く掘り下げます。新たな機会の特定、メッセージの洗練化、そしてターゲットオーディエンスとのつながりを築くための効果的な戦略策定をお手伝いします。
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本記事の執筆者:ステファニー・マトゥッチ(食品・飲料部門 ディレクター)
食品・飲料業界における原料イノベーション、食品科学、栄養トレンドの分析をリード。2013年の入社以来、健康・ウェルネス分野の新製品開発に関する最新の洞察を提供し、複雑な科学的テーマを分かりやすく実践的に伝えることを専門としています。
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