消費者はまだチーズを「定番食材」として購入しているのか?
チーズは世界的に「定番食材」としての地位を確立していますが、その位置付けの強さは市場によって異なります。アメリカ、イギリス、ドイツではチーズが毎日の食生活に深く根付いており、一人あたりの消費量や支出額も世界で最高水準にあります。それでも、インフレによりチーズの消費行動は変化しています。消費者がより価値志向になったことで、多くの人々が安価品に買い替えたり購入頻度を見直したりしています。これらの成熟市場でビジネスを展開するブランドにとって重要なのは、需要の創出ではなく、製品の形式や価値提案、活用シーンに影響を与えることです。
これとは対照的に、日本とタイはチーズの消費に関して非常に異なる状況にあります。日本の1人あたりの年間チーズ消費量は依然として低いものの、プロセスチーズやナショナルブランドが人気を獲得し日本市場をリードしていることから、支出額は高水準を維持しています。一方、タイは急成長中の市場であり、チーズが文化的に浸透しつつあります。
本記事をお読みいただき、経済的圧力、消費者の優先順位の変化、文化的背景の変化が世界の主要市場におけるチーズ産業やチーズの消費習慣にどのように影響しているか、さらに詳しいインサイトをぜひご覧ください。
チーズ消費の変化
チーズの消費パターンは市場ごとに大きく異なり、文化、経済、そして健康やサステナビリティに対する意識の変化によって左右されています。イギリス、アメリカ、ドイツなどの定着したチーズ市場では消費頻度が依然として高く、多くの消費者が日常的にチーズを食べています。しかし、インフレによる影響で、特に低所得世帯や若年層の間では価格への敏感さが一層強まっています。これにより、特にプライベートブランドがチーズ業界で優勢を占めるイギリスやドイツでは、プライベートブランドや低価格帯製品へのシフトが加速しています。チーズは引き続き食事や間食の定番品ですが、若い世代は環境や健康への配慮をますます意識するようになっており、その結果、消費量の徐々な減少や粉チーズなどの新しいタイプへの関心の高まりにつながってます。
日本ではチーズを毎日食べている消費者はわずか4%に過ぎず(リンクはミンテルのクライアントのみ閲覧可能)、大半の人はチーズを「定番品」というよりも「たまに食べるもの」と見なしています。女性、特に高齢女性や母親は最も積極的な消費者層で、チーズを家族全員の食事に適した栄養価の高いカルシウム豊富な食材として捉えています。これらの層は価格にそれほど敏感ではなく、購買行動も安定する傾向にあります。対照的に、若い日本人男性はチーズを「あったらいいもの」として捉える傾向にあり、価格が上昇するとすぐに買い控えています。毎日の食事や間食におけるチーズの栄養的・機能的メリットを強調し、若年層の消費頻度を高めることが成長機会につながるでしょう。
一方、タイ市場は急速に発展しており、チーズは徐々に親しまれつつありますが、まだ毎日の食卓には定着していません。消費者の80%以上がチーズを食べると回答していますが、多くは消費が安定しつつも増加していない「カジュアル消費層」に属しています。都市部の若年層は新しいチーズを試すことに積極的ですが、やはり最も有望なグループは「積極消費層」です。この層は積極的にチーズの消費量を増やしており、プレミアム製品、新しい食感、大胆なフレーバー、便利なスナックタイプのチーズに好意的な姿勢を見せています。持ち運びやすさや楽しさ、フレーバーを重視した製品に関するイノベーションは、消費頻度とカテゴリー価値の両方を高める上で引き続き不可欠な要素となっています。
新たなチーズの消費シーン
消費習慣が変化する中で、新たな食事シーンがチーズを取り入れる方法やタイミングを拡大させています。各市場で、ブランドはこれまで食事の脇役だったチーズに新たな役割を与え、新しい活用方法を提案しています。こうした新しい食事シーンはチーズの汎用性を際立たせており、たんぱく質豊富なディナーから持ち運びに便利なランチの一品、贅沢なデザートのイノベーションに至るまで、様々なアイデアが生まれています。
ディナーにチーズを活用する
- 肉代替品としてのチーズ:フランスやドイツでは、チーズがメインディッシュのたんぱく源としてますます提案されています。チーズミンチ、グリル可能なチーズ、チーズパティなどの製品は、ハンバーガーやバーベキュー、その他のメインディッシュなどで肉を使用しない代替食材として活用されています。
- 世界各国の料理・フュージョン料理:ドイツやイギリスのブランドは、チーズを世界各国の料理やフュージョン料理に幅広く使える食材として打ち出しています。アジア風や中東風、特定のフレーバーから着想を得た製品などがあり、Castelloが発売するTaste Thailand Chilli & Ginger Cream Cheese Ringもその一例です。

Castelloの「Taste Thailand」チーズは新しい革新的なフレーバーを採用。
出典:castellocheese.com
チーズ市場の商機:ランチをグレードアップする
- 持ち運びやすいチーズスナック:スナックパックやチーズスティック、個包装タイプのチーズは、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本で、子どもにも大人にも便利な栄養価の高いお弁当用アイテムとして位置付けられています。
- サンドイッチやサラダにチーズを使用:イギリスやドイツのブランドは、サンドイッチ、ラップ、サラダを手軽に引き立てる食材としてチーズを提案し、簡単でおいしいランチを求める多忙な消費者に寄り添っています。
デザートに贅沢なチーズのひととき
- デザートチーズとチーズスイーツ:日本のチーズ市場は、チーズケーキやチーズゼリー、チーズ風味のアイスクリームをはじめ、チーズを主役にしたデザートのイノベーションを先導しています。製品の多くは低カロリーや低炭水化物を訴求することで、「贅沢なのに罪悪感ゼロ」を打ち出しています。
- 甘じょっぱいチーズの組み合わせ:世界中のブランドは、チーズをフルーツコンポートやチョコレート、はちみつ、焼き菓子などの甘い要素と組み合わせることで、甘さと塩味を融合させた新しいハイブリッドな製品を生み出しています。
- 食事を締めくくるチーズ:フランスやヨーロッパの一部地域では、個包装のチーズが重すぎず満足感のある食事の締めくくりとして販売されており、従来のデザートに代わる甘くない選択肢を提案しています。
食品価格の高騰がチーズの消費習慣に与える影響
世界の各市場では、食品価格の高騰によりチーズが主な節約対象となっていますが、その度合いはチーズがどれほど文化的に根付いているかによって左右されています。イギリス、アメリカ、ドイツなどの成熟したチーズ市場では、インフレにより価格意識が高まったことで、カテゴリー全体の買い控えではなく購買行動の見直しが進んでいます。例えば、イギリスの消費者は大幅な節約で対応しており、42%が「金銭的な不安からチーズへの出費を減らす」と回答したほか、およそ半数はより安価な代替品への買い替えに前向きな姿勢を見せています。アメリカでも同様の傾向が見られ、予算重視の消費者はお金を節約するために購買行動を適応させています。

チーズがそれほど定着していない市場では異なる動きが見られます。チーズが定番品として定着していない日本では、価格上昇がより直接的に消費減少を招いており、26%以上の消費者が値上げを受けて消費を減らしています(リンクはミンテルのクライアントのみ閲覧可能)。
職人技によるプレミアムなチーズの消費トレンド
インフレにより一部の消費者が手頃な価格の製品に流れる一方、こだわりのある層は引き続き、味のおいしさや職人技、地元とのつながり、サステナブルな取り組みなどを重視した製品を求めています。
プレミアムで味わい豊かな体験
世界各地の消費者は、より豊かな味わいや贅沢な体験を届けるチーズをますます求めるようになっています。多彩なラインナップ、チーズの盛り合わせ、プレミアムなスナックパックは、特別な日を彩るアイテムとしてだけでなく、日常のちょっとした贅沢としても人気を集めています。大人向けのチーズスティックや小分けされたプレミアムチーズといった特徴的なタイプは、競争の激しい市場でブランドの差別化を実現し、味、品質、利便性を重視する消費者への訴求力を高めるでしょう。
伝統的な製法、手作り生産、地元の起源といった職人技をアピールする訴求はチーズの「価値提案」を強化し、より高い価格設定の正当性を伝えることができます。実際、アメリカではX世代の約40%が「職人技のチーズにはより高い金額を支払っても構わない」と考えています。
ヴィーガンチーズ製品に対する消費者の姿勢
健康、サステナビリティ、倫理への配慮を背景に、プラントベースやヴィーガンチーズへの関心が世界中で高まっています。大半の市場では乳製チーズが引き続きメジャーではあるものの、プラントベース代替品も一部の市場でニッチな需要を開拓しています。各地域ではいくつかのパターンが現れ始めており、このカテゴリーには商機と課題の両方が混在しています。
健康、サステナビリティ、地元での原料調達
消費者が乳製品とプラントベース製品の併用を目指す中で、健康的な食生活のトレンドはより広範なサステナビリティ志向とも重なり合っています。例えば、イギリスではKerryから、チェダーチーズ、ミルク、バターなどを展開するオーツと乳成分をブレンドしたシリーズSMUG Dairyが発売されました。ブランドによると、同シリーズは乳製品の味わいをキープしつつ一般的な乳製品よりも飽和脂肪酸や二酸化炭素排出量を抑えることで、より健康的かつ環境にもやさしいとされています。

SMUG Dairy:Kerryが発売する乳成分とオーツをブレンドした乳製品ラインナップ。
出典:smugdairy.com
若年層は、一貫してプラントベースチーズに好意的な姿勢を見せています。アメリカでは、チーズ消費者全体の37%が信頼できるブランドからのプラントベースチーズに関心を寄せており、25-44歳の消費者ではこの割合が50%以上に上昇しています。同様に、ドイツでは若い世代の間で健康や環境に対する意識がますます高まっており、この影響でプラントベースチーズの消費も2024年には15%まで増加しています。
ヴィーガンチーズの主な障壁:味、食感、加工への懸念
プラントベースチーズは関心の高まりと同時に、大きな障壁にも直面しています。味の悪さ、不快な食感、過度な加工のイメージは依然として主な懸念点となっています。イギリスでは36%の消費者が味の悪さを指摘しており、同様に、ドイツでは65%の消費者が代替乳製品の原材料表示の長さに不快感を示しています。こうした味覚や認識の課題に対処することが、将来的にヴィーガンチーズを広く浸透させていく上では不可欠です。
フレーバーや付加価値をプラスした製品が試し買いを促す
フレーバー付きのプラントベースチーズは、好ましくない味や食感を隠すことができるため、試し買いやリピート購入を促す上で特に重要です。タイでは39%の消費者がプラントベースチーズに関心を寄せており(リンクはミンテルのクライアントのみ閲覧可能)、フレーバー付きの製品は乳製チーズからプラントベースチーズへの買い替えを促進しています。各市場では、環境やサステナビリティだけに焦点を当てた訴求よりも、親しみのある味や高たんぱく・低脂質といったプラスαの機能性を取り入れた製品の方がより魅力的であることが明らかになっています。また、消費者教育やレシピの提案も重要な役割を果たします。ドイツでは、自炊をする人の約半数がプラントベースチーズを料理やベーキングに取り入れる方法についてアドバイスを求めており、同カテゴリーの新規性とその普及を後押しすることの重要性が浮き彫りになっています。
2026年以降、市場成長を促す新しいチーズの形状や製品とは?
世界でチーズの消費習慣が進化を続ける中、イノベーションは変化するライフスタイルや健康志向、料理習慣に寄り添う形状や食体験へとシフトしています。今後の市場成長は、消費者が何を食べるかだけでなく、日常の中でいつどのようにチーズを取り入れるかによっても左右されるでしょう。各地域のブランドにとって、これは利便性、味、機能性、消費シーンなどを再定義する機会となっています。
おやつ感覚で食べられる便利なチーズが業界のトレンドを席巻
間食シーンは世界のチーズ市場全体で最も強力な成長の原動力となっており、消費者は利便性とプレミアム感を兼ね備えた製品をこれまで以上に求めるようになっています。大人やシニア層、忙しい家庭では、食べやすいチーズスティック、個包装のスナックパック、食べきりサイズのチーズが人気を博しています。ヨーロッパやアメリカではおやつサイズのブロックチーズが好調に売れており、同様に日本でも小分けタイプのチーズが支持されています。

BelGioiosoは、同社のParmesan Power-Full Snackを手軽なランチの一品として売り出しています。
出典:belgioioso.com
新しい食感や味
食感や味のイノベーションがチーズ業界のトレンドを再構築しており、特に多様性や新規性が強力な購買要因となっている市場ではこの動きが顕著に見られます。特に、塗るチーズやとろけるチーズの人気は急上昇しています。
同時に、大胆で冒険的なフレーバーへの需要も加速しています。北アメリカやヨーロッパでは、より芳醇な香りやスパイシーさ、甘い風味、世界各国の味の組み合わせを取り入れたチーズの需要が高まっています。こうしたより大胆なフレーバーへの需要は、フレーバーのイノベーションが味・食感の障壁を克服する上で重要となるプラントベースチーズカテゴリーでも見られています。これらのトレンドはすべて新しい食体験への前向きな姿勢を示すと同時に、限定版や季節商品、異文化からのインスピレーションを通じて、フレーバーを重視する消費者に訴求する機会を生み出しています。

Vitasiaはわさび味を取り入れた日本風チーズを発売。
出典:UK Cheese Market Report
機能性と健康に注目したチーズ
健康志向のチーズは、家族世帯やウェルネス意識の高い消費者、毎日の食品により多くのメリットを求めるシニア層のニーズを背景に、新たな成長領域として浮上しています。高たんぱくやプロバイオティクス入りチーズが高い関心を集めており、チーズを単なる贅沢品ではなく、栄養価の高い間食や食事の一部として位置付けています。
A2ミルクを使ったチーズや食物繊維配合タイプなどの新しいイノベーションには、消化器系の健康、健康寿命、「お腹にやさしい」訴求が採用されています。これらの製品は、通常の乳製品でお腹を壊しやすい人や、より包括的な健康目標をサポートする機能性食品を探している人から支持を得ています。健康への配慮がますます食品選びに影響を与える中、機能性チーズはブランドにとって差別化を実現し、消費機会を拡大する上で確かなアプローチになるでしょう。
新しい活用シーン
チーズの消費トレンドや活用シーンは、消費者のライフスタイルや食事パターンの変化、異文化料理への関心を背景に急速に拡大しています。最も顕著なマクロトレンドの一つは、汎用性の高い食材としてのチーズの存在感の高まりです。アジア全域で、チーズは米料理やインスタント麺、焼き菓子、スナックなどに取り入れられ、グローバルとローカルの食習慣をつないでいます。特に、シュレッド、スライス、粉チーズはこれらの用途に適しており、毎日の料理にシームレスに溶け込んでいます。
欧米市場では、パンと組み合わせる従来の食べ方を超えて用途を多様化させるアプローチが重要性を増しています。パンにチーズを乗せる食べ方は依然として定番ですが、ブランドはメインディッシュやサイド、サラダ、食事を引き立てる要素としてチーズをよりダイナミックに活用することを提案しています。ここではソーシャルメディアが重要な役割を果たしています。ドイツでは、消費者の3人に1人以上がオンラインでレシピを見た後、新しいチーズの活用方法に挑戦したと回答しています。
チーズが伝統的な料理と新しい食事シーンの両方で定番化するにつれ、ブランドにはイノベーションの余地がますます広がっています。例えば、特定の料理に合わせた形状のチーズや複数要素を組み合わせたハイブリッドスナック、あるいは現代の食生活におけるチーズの用途を広げるアイデア提案型のコミュニケーションなどがあるでしょう。
ミンテルとともに未来を見据える
チーズの消費のあり方は変化していますが、需要はなくなっているわけではなく、むしろ形を変えて進化しています。消費者が「価値」を見直し、新しい形状を求め、世界の様々なフレーバーを楽しむ中で、チーズ業界の次のフェーズでは目的意識を持ってイノベーションに取り組み、新たな需要に誠実に応えるブランドが成功を収めるでしょう。
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