ミンテルが発表する「Mintel Most Innovative(ミンテルが選ぶ最も革新的な新商品、以下MMI)」は、世界各国で発売された新商品の中から、消費者ニーズの変化や市場の未来を象徴する革新的な事例を選出するアワードです。
2026年の受賞商品のひとつである「IN MIST」は、日本で開発されたビタミンサプリメントです。消費者ニーズの変化を背景に、ブランドがサプリメントの形状を見直し、ビタミンの届け方や体験のあり方に新たなイノベーションを生み出していることを示す事例です。
ビタミン摂取を見直す、新たなアプローチ
従来のサプリメントといえば、大きな錠剤を水で飲み込むのが一般的でした。しかし、「IN MIST」はその前提を覆します。開発者であるゼロワンブースター長田氏は、従来の摂取方法に対する違和感からスタートしたといいます。

「ビタミンは一度に多く摂取しても体外に排出されてしまう。むしろ、こまめに少量ずつ摂取するほうが理想的ではないかと考えました」
この発想から、ミスト状で摂取するという新しい形状が生まれました。さらに、成分の安定性にも着目しています。

その結果、IN MISTはビタミンを空気接触から守りながら素早く摂取できるよう、エアゾール容器を採用しました。このフォーマットはVMS(ビタミン・ミネラル・サプリメント)カテゴリーではまだ珍しく、摂取方法と容器設計の両面で同製品の革新性を際立たせています。
この製品について、ミンテルのアナリストは次のように評価しています。

― ミーガン・スタントン
ミンテル フード&ドリンク インサイト ディレクター(APAC地域担当)
こうしたイノベーションは、単なる製品の差別化ではなく、日本のビタミンサプリ市場そのものの進化を映し出しています。
成長を続ける一方で、まだ伸びしろの大きい日本市場
日本のビタミン・サプリメント市場は、高齢化の進展や健康意識の高まりに加え、忙しい日常の中で手軽に栄養を補いたいというニーズを背景に成長を続けています。美容・アンチエイジング用途への関心の高まりも市場拡大を後押ししています。
一方で、日本のサプリメント利用率は依然として限定的といえます。ミンテルの2025年の調査では、利用率は約39%、ビタミン・ミネラルに絞ると23%にとどまり(リンクはミンテルのお客様限定アクセス)、これは米国(94%)や英国(82%)と比較すると大きな開きがあります。つまり、日本市場は成長を続けている一方で、利用拡大の余地も大きい市場といえます。

消費者の利用を妨げるもの:使いやすさの重要性
日本市場の成長余地を考えるうえで重要なのが、サプリメントの「利用ハードル」です。
サプリメント非利用者層の障壁としては、「価格の高さ」や「効果への確信の低さ」に加え、「摂るのが面倒」という実用的な理由が大きな割合を占めています。特にこの傾向は40代以下で顕著であり、忙しい日常の中でサプリメントが習慣化しにくい実態が浮き彫りになっています。
一方で、若年女性(18–29歳)では、この「面倒さ」を障壁とする割合が比較的低いことも示されています。これは、グミサプリメントのような、より手軽に取り入れやすいフォーマットの浸透が影響している可能性があります。つまり、サプリメントの利用拡大において鍵となるのは、成分や効能だけではなく、“続けられるかどうか”という体験設計です。さらに、求められる価値は世代によっても異なります。
- 若年女性:美容・実感・手軽さ
- 30代男性:健康と美容の両立
- 中高年層:予防・機能性
こうした違いはあるものの、共通しているのは、サプリメントが単なる「栄養補給」ではなく、生活の中で無理なく取り入れられる存在であることが求められている点です。
成分を超えて:製品設計の重要性
こうした「利用ハードル」を背景に、日本のサプリメント市場では、パーソナライズ化や多機能化が進み、消費者ニーズはより細分化されています(リンクはミンテルのお客様限定アクセス)。加えて、グミやパウダーなど摂取しやすい新しい剤形が広がり、「誰に・何を提供するか」に加えて、製品の設計はより多面的になっています。
このような変化の中で重要になっているのが、製品が日常生活の中にどのように組み込まれるかという視点です。前述の通り、サプリメントの利用を阻む要因のひとつは「手間」であり、継続的に取り入れやすい設計が求められています。つまり、成分や機能に加えて、無理なく続けられる形で提供されているかどうかが、具体的な差別化要因となっています。
この観点で見ると、IN MISTの「ミスト摂取」は、市場の進化を象徴するアプローチといえます。水を使わず、瞬時に摂取できるという特性は、サプリメントを“意識して摂るもの”から“生活に溶け込むもの”へと変える可能性を持っています。

アワードがもたらす意味:イノベーションを世界へ
今回の受賞について、開発者のゼロワンブースター長田氏は次のようにコメントしています。
「革新的な製品として外部から評価されたことを嬉しく思います。この受賞をきっかけに、アメリカやヨーロッパを含めた海外展開を進めていきたいと考えています」
MMIの受賞は、単にイノベーションを表彰するものにとどまりません。世界中のバイヤー、ブランド、意思決定者が注目するプラットフォームで評価されることで、カテゴリー成長をけん引する商品としての存在感を示し、ブランド認知の向上や、海外展開における信頼性の強化にもつながります。ミンテルは、こうした世界の革新的な商品やトレンドを可視化し、企業の成長を支援することをミッションとしています。
次の一手を考えるために
IN MISTが示したのは、既存の常識を問い直すことで、新たな市場機会が生まれるという事実です。
では、世界では他にどのような革新が起きているのでしょうか。そして、それらは日本市場にどのような示唆をもたらすのでしょうか。ミンテルのMMI 2026受賞事例集では、こうした視点で選ばれた世界の革新的な新商品を多数ご紹介しています。
製品開発や市場戦略のヒントとして、ぜひご活用ください。
