化粧品のパッケージは、消費者の期待や文化的背景、市場環境の変化を受けながら常に進化しています。パンデミック以降は衛生意識が高まり、「安全」「密閉性」「使いやすさ」へのニーズが顕著に上昇しました。
また、環境配慮の意識が高まる中、エコ素材、リフィル(詰め替え)システム、サーキュラー設計への関心も強まっています。さらに、利便性・スピード・実用性を求める動きも加速しており、多忙な生活者にとってパッケージは重要な役割を担っています。
一方でパッケージは、単なる容器にとどまらず、ブランドを一瞬で伝える“最も強力なマーケティング要素”のひとつです。パッケージは差別化の鍵となり、品質、価値、そして個性を一目で伝えます。パーソナライゼーション、機能性、視覚的インパクト、そしてサステナビリティに対する期待が高まる中、パッケージはブランドロイヤルティ形成のカギとなっています。
ミンテルの専門家が特定したビューティおよび化粧品パッケージのトレンドをぜひご覧ください。
市場別:サステナブルな化粧品パッケージに対する意識
サステナビリティは、化粧品パッケージのトレンドを形成する最も強い要因のひとつであり、意識向上と自覚的な行動がクリーンビューティの受容を後押ししていますが、その採用レベルと消費者の期待は市場ごとに大きく異なります。
※以下は日本のビューティパッケージの今後を考えるうえでも示唆が大きい海外動向です。
米国市場:サステナビリティは文化的に依然として重要性を持っていますが、進展は次の2つの主要な障壁によって遅れています。
1.脆弱なリサイクルインフラ
2.サステナビリティ訴求に対する消費者の疲労感の増大
リフィル可能な形式は米国では限定的な拡大にとどまり、2022年から2024年のローンチ増加はわずか7%にとどまっています。これは、環境配慮型デザインに伴う物流面での課題やコスト増を反映しています。
しかし、フレグランスは例外で、同期間にサステナブルなフレグランスパッケージのローンチが80%増加し、高い関心が示されています。
英国市場:
消費者はリサイクル可能パッケージをすでに“最低限の基準”として見ています。
その結果、ブランドは単なるリサイクル可能性を超え、堆肥化可能素材、バイオ由来素材、食品廃棄物を利用したアップサイクル素材、堆肥化可能なサシェといった次世代素材の採用へとより強く移行しています。
また、高齢層を中心に、成分の透明性や使用方法の理解を支える、明確で詳細なパッケージ表示への評価も高まっています。
中南米市場:
リバースベンディング(使用済み容器を回収・ポイント付与する仕組み)や、コーヒーポッドのリサイクルアルミニウムなど再生素材を用いたパッケージなど、革新的なパイロット施策を通じて、ブランドはサステナビリティを推進しています。
ブラジルのハイブリッドワーカー層は環境責任や廃棄物削減のメッセージにより強く共感しやすく、エコ訴求が特に有効です。
欧州市場:
サステナビリティは“付加価値”ではなく“当然の期待”として捉えられています。
しかし、採用はインフラの制約や、米国にも見られるようなサステナブル訴求疲れによって妨げられる場合があります。それでも、堆肥化可能素材、リフィルシステム、再生素材パッケージなど、代替素材の採用には確かな勢いが見られます。
詰め替え可能な美容パッケージで耐久性を求める消費者の需要に応える
リフィル(詰め替え)はサステナブルな化粧品パッケージの中核的存在ですが、利便性、入手しやすさ、そして認識といった障壁が依然としてあるため、消費者の購入状況は大きくばらつきがあります。
認知度は高く、ドイツの消費者の77%が「ビューティ・パーソナルケアのパッケージをどのようにリサイクルするか知っている」と答えている一方で、実際のリフィル利用はその数値に追随していません。
2024年には約50%がリフィルパックを購入したと回答しましたが、リフィル可能な製品を購入したのは40%にとどまり、環境配慮したいという意識はあるが、実際にリフィルを購入する行動にはつながっていない“認知と利用の乖離”が浮き彫りになっています。
一部の消費者はリフィルによって製品が安っぽく感じられると考えており、これはラグジュアリー化粧品パッケージにおいて特有の課題となっています。ブランドはサステナビリティと高級感、耐久性、視覚的魅力のバランスをとる必要があります。
ここでミンテルは、リフィル採用を阻む2つの核心的課題を特定しています。
1.利便性こそがリフィル可能ビューティパッケージの決定的な障壁
リフィルシステムが、ビューティ領域におけるパッケージトレンドの新潮流になることを阻む最大のハードルは「利便性」です。米国では、約70%の消費者が店頭でのリフィルは不便だと答えており、その理由として“時間がかかる”“手間がかかる”“リフィルステーションへ行く頻度が安定しない”ことを挙げています。
欧州でも同様の課題が見られ、消費者は店頭でのボトル詰め替えよりも、保管しやすく、使いやすく、リサイクルしやすい“リフィルパウチ”を圧倒的に好んでいます。
その結果、リサイクルはリフィルよりも一般的ですが、それは消費者がリフィル形式を嫌っているのではなく、リサイクルの方が速く、行動変化が少なくて済むからです。
2.衛生面とインフラが主流化を制限している
衛生面の懸念は、特にパンデミック後の状況において顕著な阻害要因として残っています。一部の消費者は、容器の再利用や店頭でのリフィルに対し、製品の安全性が損なわれるのではないかと不安を抱いています。インフラも障害となっており、多くの地域ではリフィルステーションや回収システム、標準化された再利用ボトルが十分に普及していません。
こうした根本的な課題があるにもかかわらず、ビューティパッケージの革新は加速しており、耐久性、利便性、美観に関するさまざまな実験が進んでいます。
・アルミニウムや耐久素材を用いた返却・再利用可能なパッケージスキーム
(例:返却で消費者に報酬を提供する Reposit システム)。

Beauty Kitchen の Everyday Gently Organic Conditioner with Reposit は、店頭で購入して返却する再利用可能なアルミボトルで販売されており、消費者が感じるリフィル作業の負担を軽減しています。
・デオドラントやオーラルケアなどのカテゴリーでのサブスクリプション型リフィルモデル。
・Zero のような郵送型パウチや在宅リフィルシステムは、店頭でのリフィル自体を不要にするよう設計されており、リフィルステーションを探す手間を解消しています。
おそらく化粧品パッケージ市場全体で最も明確な示唆は、“需要が供給を上回っている”という点です。消費者はリフィルオプションに一貫した関心を示していますが、大衆向けブランドが提供する選択肢は石けんやボディーソープ類以外では限定的です。このギャップは、ブランドが耐久性、魅力、そして入手しやすい詰め替えフォーマットを提供することで、イノベーションをリードできるという大きなビジネスチャンスを示しています。
素材革新が進む未来のビューティパッケージ
ブランドがコスト圧力、消費者の期待、そしてサステナブルな化粧品パッケージへの需要の高まりに対応する中で、素材の選択は急速に変化しています。
プラスチックは価格の手頃さから依然として主流ではあるものの、化粧品パッケージ市場ではガラス、アルミニウム、および次世代の紙系素材への顕著な動きが見られています。
特に板紙(ペーパーボード)は大きな成長を見せており、従来型プラスチックや多層板の使用は着実に減少しており、化粧品パッケージトレンド全体の広範な転換を示しています。
次世代エコ素材:堆肥化可能、アップサイクル、植物由来素材
ビューティーパッケージの革新における最も刺激的な領域のひとつが、堆肥化可能素材、バイオ由来素材、そしてアップサイクル素材の台頭であり、ブランドは“リサイクル可能”のさらに先へと進んでいます。
・自宅で堆肥化可能なパッケージ、特に菌糸体(キノコ由来)素材は注目を集めています。
Kind to Skin、Haeckels、Oio Lab といったブランドが、外装パッケージにおけるその実用性を示しています。
・植物や食品廃棄物を利用したアップサイクル素材もより一般的になっています。
例えば、Wilkinson Sword のサステナブルパッケージには55%の植物廃棄物が使用されており、ツールやカミソリには部分的に再生プラスチックが用いられています。
・Green Science Alliance の植物由来ジェルネイルのように、カラーコスメ領域では生分解性素材が登場しており、従来のプラスチックに代わる選択肢を提供しています。

Green Science Alliance による生分解性・植物由来のジェルネイル
ラグジュアリーな化粧品パッケージ:ガラスとアルミニウム
・ガラスは高級感、新鮮さ、プレミアム品質と強く結びつけられており、ラグジュアリー化粧品パッケージの定番となっています。
・アルミニウムは、耐久性、リフィル可能パッケージとの相性、高いリサイクル性によって、緩やかではあるものの着実に採用が広がっています。
耐久性と実用性が消費者の購買判断を左右する
市場全体で、消費者は何よりも耐久性と実用性を優先しており、ドイツでは半数以上がパッケージ評価の重要な要素としてこれらを挙げています。リサイクル性、リフィル可能性、低負荷素材といった環境配慮の特性も評価されていますが、多くの場合、機能面の性能に次ぐ位置づけとなっています。サステナビリティと使いやすさの間にあるこの緊張関係が、新たなビューティパッケージトレンドを形作っており、ブランドに対して“丈夫でありながら環境負荷の少ない”素材開発を促しています。

化粧品パッケージ市場における主要購買要因
米国のビューティおよびパーソナルケアの購入者の半数以上が、価格を下げるためにパッケージの品質を犠牲にしており、財政的制約が購買判断にどのように影響するかを鮮明に示しています。
しかし、価格に敏感な環境でも、機能性は依然として不可欠です。消費者は衛生性、ロンジェビティ、そして使いやすさを兼ね備えたパッケージへの期待をますます高めています。こうした期待は化粧品パッケージのトレンド形成に重要な役割を果たしており、特にブランドがサステナビリティと利便性のバランスを取ろうとする際に大きな影響を与えています。
利便性が最優先である
利便性は化粧品パッケージ市場における最も強い推進力のひとつとして浮上しており、サステナビリティを上回ることもしばしばあります。消費者はビューティ&パーソナルケア(BPC)のパッケージに、実用的で直感的に使えることを求めています。
ドイツでは、実用性と使いやすさが最も重要なパッケージ特性のひとつとして位置づけられています。消費者の半数以上が、携帯性、耐久性、片手で操作できるパッケージを重視しています。利便性の重要度は年齢とともに増し、35歳以上、とりわけ55歳以上の消費者は、“開けやすい”“読みやすい”“扱いやすい”パッケージを求めています。アクセシビリティはより広い期待の対象となっており、約60%が「ブランドは誰もが使いやすいパッケージを作るべきだ」と考えています。
衛生性への需要の高まり
パンデミックは衛生に対する消費者の認識に長期的な影響を与えており、これは現在も化粧品パッケージのトレンドに影響を及ぼし続けています。清潔さ、汚染リスク、衛生管理のしやすさが、現在のパッケージ選好の中心的要素となっており、スキンケア、メイク、ヘアケアなど幅広いカテゴリにおける選択に影響を与えています。
※以下は日本のビューティパッケージの今後を考えるうえでも示唆が大きい海外動向です。
英国では
ブランドは、再利用ボトルに抗菌機能を付けるなど衛生上の利点を強調し、洗浄や安全なリフィル方法を明確に示すことが求められています。これらの不安に対応することは、サステナブルな化粧品パッケージやリフィルシステムがより広く受け入れられるために不可欠です。
米国では
スティックタイプ、ローラーボール、エアレスポンプはより衛生的だと見なされる一方で、ジャー容器を衛生的と捉えるのは全体の4分の1に過ぎません。
こうした認識が店頭でのリフィルに対するためらいにつながっており、一部の消費者は汚染の可能性や明確でない洗浄手順に不安を感じています。その結果、使い捨てまたは単回使用の形式は依然として人気があります。
ドイツでは
若年層の感度が特に高く、35歳未満の約半数がジャー容器(瓶入りの製品)を避けています。
パンデミックにより細菌の蓄積に対する意識が高まり、エアレスポンプ、外付けアプリケーター、洗浄しやすい詰め替え式製品などの機能がますます重要になっています。
ブランド差別化としてのパッケージ
今日の混雑した化粧品パッケージ市場において、パッケージは強力なブランド差別化要因として機能しており、特にメイクアップやフレグランスのようなカテゴリでは、米国消費者の半数以上が製品の見た目や質感に強い注意を払っています。
ビューティパッケージのトレンドが進化する中で、ブランドはデザイン、収集性、ストーリーテリングを活用して知覚価値を高め、ロイヤルティを強化し、店頭でもオンラインでも存在感を発揮するようになっています。
視覚的魅力と収集性
市場全体で、視覚的に魅力的なパッケージは主要な購買動機となっており、特に若年層で顕著です。ドイツでは、Z世代とミレニアル世代の42%が「デザインが重要」と答え、35歳未満の購入者の50%以上が“特徴的な外観のパッケージに追加で支払ってもよい”と回答しています。また、多くのドイツの消費者はビューティ製品を“インテリアの一部として楽しむ傾向が強い”とみなし、パッケージが個人のスタイルの延長として受け止められています。
いくつかの市場では、ブランドは鮮やかな色合い、触感のある仕上げ、レトロに着想を得た美学へと傾いています。これは、感覚的な刺激や印象的なビジュアル、開封体験を高める独自のテクスチャーを好む、化粧品パッケージの幅広いトレンドと一致しています。
ソーシャルメディアや美容系インフルエンサーは、こうした美意識をさらに拡散し、“インスタ映えする”パッケージは自然とブランドのリーチを拡大します。英国ブランドの Trinny London は、鮮やかな色使いと独創的なグラフィックによりフィード上でも店頭でも目立ち、パッケージが記憶に残り、欲求を喚起することを示しています。

楽しくカラフルなパッケージに入った、Trinny Londonの保湿クリームとクレンザー。
出典:trinnylondon.com
エモーショナルブランディング:感情的つながりを通じてブランドを差別化する
化粧品パッケージ市場がますます飽和状態になる中、エモーショナルブランディングと共鳴性は、差別化のための強力な手段として浮上しています。機能性や美的要素を超えて、感情的価値は製品のパフォーマンスと同じくらい影響力を持ちます。
「ストーリーテリング×ブランド価値」で消費者を惹きつける
ブランドの目的、伝統、感情的メッセージを伝える手段として、“物語性のあるパッケージ”は市場全体で支持を得ています。英国では、ポジティブなアファメーション、前向きなメッセージ、ブランドの歴史を示す要素を取り入れたパッケージが、消費者に“認められている”“大切にされている”という感覚を与えています。
ノスタルジア、逃避感(非日常性)、気分を高める要素で購買者と共鳴する
ノスタルジア(懐かしさ)を基調としたデザインは、ビューティおよび化粧品パッケージ全体で広がっています。レトロな美意識、子ども時代に着想を得たモチーフ、ポップカルチャーの引用、遊び心のあるアートワークは、喜び、安心感、親しみを呼び起こします。
ドイツでは、気分を高めるビジュアルや芸術的・彫刻的な形式が特に評価されており、購買者はビューティパッケージを“装飾物”として捉えています。これにより、収集したくなる、飾りたくなるようなデザインの感情的な魅力が強調されています。
パーソナライズされた製品で消費者を特別な存在として感じさせる
パーソナライゼーションは最も強力なマーケティング戦略のひとつとなり、ブランドが感情的なつながりを築き、混雑した化粧品パッケージ市場の中で差別化する方法を変えています。
ドイツのZ世代の63%が、“ブランドと特別につながっていると感じられる”パーソナライズ形式に興味を示しています。この変化は、“個性を表現し、アイデンティティを強化し、所有感を生むパッケージ”を求める消費者の広範な欲求を反映しており、化粧品パッケージにおけるパーソナライズが重要な差別化要因になっていることを示しています。刻印などのパーソナライズ要素は、知覚価値を高め、エンゲージメントを深めます。
ラグジュアリービューティにおけるパッケージ
ラグジュアリーセグメントでは、パッケージはブランド認知、感情的つながり、長期的なロイヤルティを形成するうえで非常に大きな役割を果たします。化粧品パッケージ市場がますます競争的になる中、ラグジュアリーブランドはプレミアムなポジショニングを正当化し、目の肥えた顧客の期待に応えるために、独自性のあるデザインに依存しています。
・視覚的魅力と独自性
魅力的で視覚的に印象的なパッケージは、ラグジュアリー化粧品パッケージにおいて最も強力な差別化要因のひとつであり続けています。ドイツとフランスの消費者のおよそ30%が、美的要素を“品質の主要な尺度”とみなしています。
・本物らしさ(産地や職人技、伝統を感じさせる要素)のあるローカライゼーション
ラグジュアリー層の購買者は、地域由来の原料、職人技術、地域に着想を得たアートワークなどを通じて“本物らしさ”を伝えるパッケージに価値を見出します。
限定版や文化的背景に基づくモチーフ、原産地に基づくストーリーは、憧れと本物らしさの双方を求める若い消費者に特に響きます。こうしたストーリー性の深さはブランドアイデンティティを強化し、パッケージを単なる機能的コンテナではなく“文化的な接点”として位置づけます。
ミンテルとともにビューティパッケージ革新の最前線に立つ
消費者の期待が進化するにつれ、パッケージはビューティ業界における最も戦略的なレバーのひとつとなっています。サステナビリティや素材革新から、感情的共鳴やパーソナライゼーションに至るまで、今日の化粧品パッケージトレンドは、“機能的であるだけでなく、意味を持つ製品”への欲求を反映しています。
ミンテルの専門知識は、革新を受け入れ、利便性を優先し、デザインを通じて真のつながりを築くブランドが、飽和した市場で際立ち、ビューティパッケージの未来を形作る最適な立場に置かれると示しています。
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