次世代の食品消費者、アルファ世代とは?

次世代の食品消費者、アルファ世代とは?

最新記事: 2024年12月26日
この記事は8分で読めます

アルファ世代(Generation Alpha)はまだ若い世代ですが、企業がこの新たな消費者層への対応を準備し、関係を築き始めるには、まさに今が重要なタイミングです。2010年から2025年に生まれた(まだ生まれていない世代も含む)この世代は、消費文化を再定義し、市場において強力な影響力を持つ存在となるでしょう。2029年頃から労働市場に参入することで、彼らの購買力は約5.5兆ドル(2024年12月時点の為替で833兆2390億円)に達すると見込まれています。特に食品・飲料業界において、アルファ世代の行動、価値観、期待は従来の世代とは大きく異なる特徴を持っています。

ミンテルが分析するアルファ世代と食品の関係

本記事では、アルファ世代と食品の進化する関係を深掘りし、業界をけん引する主要トレンドを明らかにしながら、この次世代の影響力のある消費者と企業がリアルで長期的な関係を築くための戦略を探ります。

アルファ世代の主な特徴とは?

アルファ世代は、選択肢が豊富で様々なものに即座にアクセスできる環境で育っており、すでに食品業界のトレンドに影響を与えています。

このような環境と、経済的不安、気候変動、急速な技術進化、そして新型コロナウイルス感染症のパンデミックといった世界的な出来事が、彼ら特有の特徴と食品業界への期待を形作っています。

  1. 自立心が強く、影響力がある
    アルファ世代はまだ若い世代でありながらも、育児やメンタルヘルスに関する革命の真っ只中で成長しており、彼らの意見が重視され、家庭での意思決定にも大きな影響を及ぼしています。ミンテルの調査によると、イギリスでは4~17歳の子どもを持つ親の63%が、子どもが家庭での食事の選択に大きな影響を与えていると回答しています。
  1. テクノロジーに精通したデジタルネイティブ
    デジタルを中心とした環境で育ったアルファ世代は、これまでのどの世代よりもテクノロジーに精通しています。アメリカでは、10代の若者の8割がスマートフォンを所有しており、常に友達などとつながっている状況です。テクノロジーを受け入れながらも、過度なスクリーンタイムによる健康リスクへの懸念から、スクリーンタイムとそれ以外の時間のバランスを意識する動きが見られます。
  1. サステナビリティと倫理の重視
    社会的・環境的課題に直面しながら育ったアルファ世代は、高い倫理意識を持ち、食品メーカーに対しても社会的・環境的価値を重視する傾向があります。インドでは、4~7歳の子どもを持つ親の約半数が、「自分の子どもは変化をもたらすことができる」と信じており、この世代の意識の高い消費者としてのポテンシャルを示しています。

アルファ世代の食品トレンド

健康とウェルネスへの関心

アルファ世代は健康意識が高まりの中で育っており、彼らは腸内健康の革命の恩恵を受ける最初の世代であり、ビタミンやミネラル、プロバイオティクスを含む機能性食品や飲料にも注目しています。

例えば、アメリカでは、4~5歳の子どもを持つ親の9割が腸内健康を促進する食品や飲料に関心を持っています。同様の傾向はイギリスでも見られ、「Belly Bugs」という教育プラットフォームでは、子どもたちが腸内微生物について楽しみながら学ぶ機会を提供しています。このプラットフォームでは、子どもたちに腸内に住む微生物を観察し、ペットを世話するように微生物を大切にすることを教えています。

このようなクリエイティブなアプローチは、子どもたちに自分の健康に主体的に関わる力を与え、栄養とのポジティブな関係を築くきっかけを提供します。

さらに、パンデミックの影響により、ビタミン・ミネラル・サプリメント(VMS)の利用が増加しました。ミンテルの世界新商品データベース(GNPD)によると、2024年に発売された世界の子ども向け食品の28%が、ビタミンやミネラルの強化を謳ったものでした。

忙しい生活や生活費の上昇に直面している親世代は、子どもたちに新鮮な食材を常に与えることが難しいと感じています。

アルファ世代のターゲット市場により効果的にリーチするために、ブランドはスナックとサプリメントのカテゴリーの境界線を曖昧にし、Smerfyのマルチビタミンキャンディーのようなキャンディー状の形態を導入しています。これらの製品は、栄養素を手軽に摂取できる美味しいキャンディとして、子どもや親のアクティブなライフスタイルにぴったりとフィットします。

Smerfyのマルチビタミンキャンディは、間食とビタミン・ミネラルサプリメントの境界線を
曖昧にすることで、アルファ世代の健康とウェルネスに関するトレンドを捉えています。

アルファ世代は、食事と健康の関連性に対する意識を高めながら成長していますが、世界の小児肥満率は依然として上昇を続けています。この複雑な問題は、社会経済的な課題、運動不足、子どもたちの食生活における超加工食品、高脂肪、砂糖、塩分(HFSS)食品の一般化など、さまざまな要因によって引き起こされています。世界的に見ると、子ども向け食品の砂糖と塩分を減らす動きは顕著に見られます。ミンテルの世界商品データベース(GNPD)によると、2024年に発売された子ども向け食品の9%が「砂糖無添加」を訴求しており、2019年から5ポイント上昇しています。親が食品の栄養価を厳しくチェックし続ける中、企業は、より健康的な代替品を開発するために、天然素材を使用したり、味を損なわずに砂糖や塩分を減らす新しい製造方法を開発したりすることが求められています。また、より健康的なライフスタイルの選択をサポートし、良い食習慣を育む教育的なコンテンツを提供するというユニークな方法を取ることもできます。

サステナブルな食習慣

アルファ世代は、親の選択に大きな影響を与えています。イギリスでは、18歳未満の子どもを持つ親の6割が、子どもの勧めで新しい商品を試した経験があります。この影響は、サステナブルな食習慣にも及びます。

アルファ世代は気候変動への取り組みにおいて重要な役割を果たすことができます。多くの子供たちがサステナビリティの問題をますます意識するようになっています。イギリスでは、4歳から17歳の子供を持つ親の約4割が、サステナビリティへの懸念から、子どもに動物由来の食品をあまり食べないように勧めていると述べています。食品および飲料メーカーは、この世代の倫理観に沿う取組みを行う絶好のチャンスを手にしています。子どもやティーンエイジャーの心に響く方法で、環境への配慮を明確に伝え、証明することで、大きな影響を与えることができます。

アルファ世代は、2050年までに世界的な食糧需要が50%以上増加すると予想される、食糧安全保障にとって重要な時期に成人を迎えることになります。気候変動が深刻になるにつれ、アルファ世代はより現実的になり、遺伝子組み換え原料や培養食品などのサステナブルな食品技術を受け入れるようになるでしょう。すでに、5歳から7歳までの子供がいるドイツ人の半数は、よりサステナブルな合成食品を、サステナビリティの低い天然食品よりも好む傾向にあります。食糧安全保障の課題が大きくなるにつれ、アルファ世代にとってこうしたテクノロジーはますます魅力的なものとなるでしょう。企業は、ターゲットを絞ったマーケティングを通じて、遺伝子組み換え作物や培養食品についてアルファ世代に教育する好機を得ているのです。生物多様性を保護するクリーンな食材を強調し、安全で豊富、かつ美味しいソリューションを提供することが可能です。

冒険心と食の楽しみを追求する好奇心

アルファ世代は、多様な料理に早くから触れさせたいと考える親の元で育っています。イギリスでは4~7歳の子どもを持つ親の8割が、この考えを重要視しています。SNS、移民、フードデリバリーの普及によって、多様な味覚や料理体験に親しんでいます。

この世代はまた、社会的課題への反応の結果、楽しみや逃避を求める傾向も見られます。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響で、リアルな体験の重要性が高まり、オンライン化が進む世界の中で、食は現実世界でのつながりを実感できる手段として注目されています。この変化により、テーマレストランやインタラクティブな食体験など、没入型のダイニング体験への関心が高まっています。外食産業もこのトレンドに追随しています。

例えば中国では、子供向けのテーマレストランXibeiが子ども向けのテーマに沿った内装、ヘルシーなメニュー、見た目にも楽しい料理で若い消費者を惹きつけており、こうした没入型体験が企業と家族との関係性を強化し、記憶に残る有意義なつながりを育んでいます。

Xibeiのテーマレストランは、アルファ世代の「食の冒険」や「現実世界での体験」への関心
にも合致しています。

世界的に見ると、5歳から12歳までの子供を対象とした新製品の発売は、ここ10年間で減少しています。その主な理由は、子供向け食品や飲料の広告に対する規制が強化され、監視が厳しくなったためです。しかし、懐かしさは顧客の購買行動において重要な役割を果たしているため、企業は、幼少期の経験がその後の企業に対するロイヤリティに与える影響の大きさを認識しておくべきでしょう。新製品の発売は減少しているものの、革新的な子供向け食品や飲料に対する需要はあります。例えば、ドイツの親の70%が、子供たちに新しいスナックを与えてみたいと考えており、この市場では新鮮なアイデアに対する根強い需要があることが浮き彫りになっています。Air Upのようなブランドは、香りのするボトルというコンセプトで、子供向け食品や飲料にはまだまだ創造の余地があることを示しています。この遊び心のあるアプローチは、若い消費者の持つ「遊びたい」という本能的な欲求を刺激するだけでなく、子供たちに新しい製品を与えてみたいという親世代の気持ちにも合致しています。

アルファ世代に向けたマーケティング戦略

健康志向であり、サステナビリティを重視するアルファ世代は、食品業界を再構築するポテンシャルを秘めています。彼らは機能性食品、サステナブルな原料調達、倫理的消費を優先し、デジタルネイティブとして、没入型の食体験やパーソナライズされた選択肢を求めています。アルファ世代はすでに家庭での食事の選択に影響を与えており、食品および飲料の未来において無視できない存在となっています。

アルファ世代が消費者として台頭する未来を見逃してはいけません。彼ら特有の価値観と習慣に共鳴する革新的な製品やマーケティング戦略を構築するために、ぜひミンテルにご相談ください。

ミンテルの無料ニュースレターSpotlightをご購読いただくと、限定コンテンツやインサイトを皆様にお届けいたします。

関連記事
2025年2月5日
世界的に、スポーツ栄養業界は過去10年間で素晴らしい成功を収めてきました。 しかし、同業界が今後も継続的に成長していくためには、克服しなければならない課題がいくつかあります。2023年、…
2024年12月17日
食品メーカーは、超加工食品(UPFs)に関連するリスクに対する消費者の認識の高まりに直面しています。このため、調理済み食品の健康に対する認識が注目され、企業は懸念を和らげ、購買意欲へつ…
2024年11月26日
お茶は世界中で親しまれている飲み物です。異なる国では、それぞれ独自のお茶文化が形成されています。イギリスでは、お茶はほぼすべての問題を解決できる定番アイテムとして重宝されています。…

ミンテルの最新レポート・カタログをダウンロード